
水の中に沈む。余計な音はシャットアウトされ、籠った音しか聞こえなくなった耳はゴーと鳴っている。Hammer Head Sharkの音楽は、そんな水のように私たちを包み込んでいく。
9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにてKhaki、Acidclank、the bercedes menz、とがる、Qoodowと共演する『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareではながいひゆ(Vo,Gt)に話を訊いた。
Hammer Head Sharkに通底する“消滅の世界”を捉えた楽曲「綺麗な骨」や「ビー玉」や「海」だと語るライブの光景。一つ一つ確かめるように語ってくれた言葉たちを、ここに届けたい。
「自分にとっての優しさが消滅になった」 消えゆくことを歌った「綺麗な骨」
――4月に「綺麗な骨」がリリースされてから、5カ月が経過しました。サウンドやジャケット、歌詞、MVのいずれをとっても別れの匂いがする1曲だと感じていますが、ながいさんはどのような作品になったとお考えですか?
「綺麗な骨」は弾き語りの形をバンドに落とし込んでいったような楽曲で。私自身、曲を作るのは好きなんですけど、アレンジも得意じゃないですし、こういう音にしたいという像がないんですよ。バンドをやっているのは、バンドや人が好きだからなので。それで編曲はメンバーにおまかせすることが多いんですが、この曲は一発で理想のものになったんですね。全員のイメージが自然と合致したから、1番スムーズに完成した曲だと思います。
――4人で作品を制作していくことに喜びを感じていらっしゃると。
バンドを始めた当初はそういう風に思ってなかったし、正直なところ1人でやろうと思った時期もあるんですね。でも、今は作曲がすごく楽しくて。何も言わなくても好きな音を出してくれる人たちだと思っていますし、「綺麗な骨」はそれを強く感じました。
――Hammer Head Sharkは朧げなサウンドスケープも印象的ですが、サウンド面ではどういった点を重視されているのでしょう。
サウンドでは耳を埋めるというか、音を充満させることを目指しています。曲を聴いてもらう時は、別の国に連れて行きたい。隙間がある瞬間も好きなんですけど、基本的に耳が埋まることに安心感を抱くので、ミックスの際も音が充満するようにしています。聴いている人を安心する場所に良い音楽で連れていきたいという思いに付随して、リバーブ感やシューゲイザーと呼ばれる音像になりました。
――外から守ってくれるものが音楽であるという考えは、サウンド面だけではなく歌詞にも表れていると思います。
音楽で居心地の良い場所を作るというのは、そもそもは自分のためなんですけど、お客さんに対する気持ちでもあって。きちんと決まっている部分ですし、音楽をする上で1番大切にしていることかもしれないですね。

――「綺麗な骨」は「綺麗な死に憧れる感覚」を描いたと拝読しました。死や消失に対するある種の肯定的な感情は、ながいさんの中に元来存在しているものだったのでしょうか。
生きている中で「ここにいることがおこがましい」と思うことがあって。自分が消えることが美しいことだと変換された時があったんです。それは悲しいや辛いという感情から別の視点で綺麗なものというか、1番正解なものだなと。「綺麗な骨」はその考えが濃く出た作品だと思いますし、今思うと全ての曲がそういった雰囲気だと思います。
――おっしゃる通り、「綺麗な骨」には終わりの美しさが込められていると感じていて。Hammer Head Sharkに通底するこの価値観は、どういった背景から生まれたものなんですか?
性格的な部分もありますが、高校時代に仲の良い友達がこの世を去ってしまったことが大きいんですよね。優しかったその子がいなくなってしまうのであれば、消えることの方が格好良く思えた。綺麗なものが生きていけない世界なんだったら、その子が行った場所のが正しい世界であり、それに憧れたんです。感情の押し付け合いで衝突が起きるなら、消滅の方が美しいなと。自分にとっての優しさが消滅になったんですよ。だからそこへの歌が多くなっているし、音楽を聴く時って外界の音が聞こえなくなるじゃないですか。その瞬間は、消滅した後の世界に似ていると思っているんです。
――優しさや強さに満ちた美しい“消滅の世界”が存在していて、そこへ行くための切符が音楽?
その通りですね。音楽に囲まれている時は消滅の世界にいる感覚があって。それが安心しますし、同じような感覚を持っている人に対して訴えたいのかな。
――「綺麗な骨」のもう一つの根幹として、身体を持つことの不自由性があると感じているのですが。
ライブをしている時、音と同化する感覚になるんですよ。それは消滅と近い気がしていて。実際には存在しているんですけど、自分がいてもいなくても許してもらえる感じ。ライブ中、身体が無くなった時が1番心地よくて安心するんです。
「居心地の良い場所へ連れていきたい」 ビー玉や海みたいなライブ
――9月1日に開催された自主企画のタイトルは『Drop Heaven』ということで、これまでのお話と繋がる部分もあると考えています。Hammer Head Sharkがライブで目指していることは、消滅の世界を降ろしてくることなのかなと。
『Drop Heaven』は福間(Dr)が付けてくれたタイトルで。今まで話したようなことを直接伝えた訳ではないんですけど、こういったタイトルが出てくるのは私がやりたいことが伝わってるからだと思いますね。
――Hammer Head Sharkにとってライブは消滅の世界を降ろしてくるものだとして、お客さんに対してはどのような思いを抱いていますか。
ライブを通じて言いたいことがあるというより、受動的でありたいんです。自分たちが演奏した場所にいていいって伝えたいし、そういう居心地の良い場所へ連れていきたい。「綺麗な骨」の<ビー玉のなかには海があって そこへ君を連れて行きたいよ>という歌詞はライブのことなんですけど、自分の思う正解や綺麗な場所、正しいところに行っていいんだって肯定できたらな。
――ライブを表現する表象として“ビー玉”や“海”を使用したんですね。
会場の中央に小さい球があって、それを自分たちの音像で大きい球体にしていくイメージでライブをしていて。空間を作りたいと思ってライブをしている中で、会場を包むその球が“ビー玉”なんです。“海”に関しては、以前福間が音楽でやりたいことについて「一緒に海に沈んでいくイメージ」と話していたんですよ。音像も海に似ていると感じていますし、考えて出てきたワードではないですね。
――聞けば聞くほど「綺麗な骨」はHHSの根幹みたいな曲だなと。10月にはカナダツアー『NEXT MUSIC FROM TOKYO vol.16』を控えています。
2023年の自主企画『魚座の痣』あたりから海外のお客さんが増えて。歌詞が分からない方もいらっしゃると思うんですけど、空間を支配して作った私たちの世界を好きでいてくれるのは嬉しいです。やっぱり海外でのライブって憧れるじゃないですか。『BECK』とかもそうだし。なので、純粋に楽しみです。

――ながいさんは影響源としてBig ThiefやRIDEを挙げられていましたが(※1)、海外インディーをルーツにしている部分も大きいのでしょうか。
正直に言うと、音楽をたくさん聴いてきたわけではないんですよ。高校生の頃はずっとYUIを聴いていて。福間がthe HIATUSや[Champagne](現[Alexandros])、クリープハイプとかを教えてくれて、段々とバンドを聴くようになったんです。で、日本のバンドならきのこ帝国やうみのて、海外だとBjörkやRadiohead、Big Thiefがしっくりきました。Radioheadはギターの弾き姿とかも含めて、レコーディングやライブの時も参考にしていますね。
――色々と名前を挙げていただきましたが、Hammer Head Sharkの目標を教えてください。
音楽をやる上で、本や写真、絵にも影響を受けているから、自分の好きなものを展示する空間を作れたらいいなと。あとは、野外音楽堂でライブをやりたくて。ライブも慣れていない状態で、きのこ帝国やcero、トクマルシューゴ、Yogee New Wavesが出てるイベント(2015年5月開催『SPACE SHOWER Presents SPRING BREEZE』)を観に行ったんですよ。その時、単純に「ここ良いな」と思ったんです。最近だとCRYAMY(2024年6月開催『CRYAMYとわたし』)がすごいライブをしていたので、「やっぱり良いな」って。雨の中、あの空間を支配したいですね。
「熱望が叶ったなって」 9月29日(日)『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』
――9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』が開催されます。対バン相手はAcidclank、Khaki、the bercedes menz、Qoodow、とがるの5組となりますが、特に気になるアーティストを教えてください。
Qoodowはこの前インタビューも読ませてもらったんですけど、『水槽から』を普段から聴いていて。熱望が叶ったなって感じです。

――改めて、9月29日(日)『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』に向けた意気込みを聞かせてください。
やりたかったバンドも多いので、純粋に楽しみです。どのバンドも強いじゃないですか。だからこそ埋もれないようにしたいですし、トップバッターとして空間を支配できたらいいなと思っています。
取材・文=横堀つばさ
(※1)https://note.com/oaiko_info/n/n5d6a1ff4e8a5
9月29日(日)開催『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

出演:Acidclank / Qoodow / Khaki / the bercedes menz / Hammer Head Shark / とがる
OPEN 15:30 / START 16:00
ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 +1DRINK(¥600)
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10月1日(火)開催『LOOSE PLAY FESTIVAL 〜after-party〜』

出演:こがれ / SleepInside / SPOILMAN / Zanjitsu
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV¥2,000 / DOOR¥2,500 +1DRINK(¥600)
LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2チケット提示: ¥0 + 2ドリンク
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