喪失の悲しさや痛み。とがるの音楽は、消えることのないその傷跡すらも抱えながら、ちょっとだけ前を向く強さを与えてくれる。

8月28日(水)にリリースされた2nd EP『808:Blue』は、メロコアやトラップなど、ナカニシイモウの音楽的関心を多分に反映させつつ、タイトルに冠されている通り、とがるの通奏低音として流れる“青”が溢れた1枚である。

9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにてKhaki、Acidclank、the bercedes menz、Hammer Head Shark、Qoodowと共演する『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareではナカニシに話を訊いた。

インタビューを通じて見えてきたのは、離別を歌う理由にもライブにも一貫する、プリミティブへの探究心だった。

「人がいなくなることって、世の中で一番悲しいと思う」 とがるが刻む“青”

――8月28日(水)に2nd EP『808:Blue』がリリースされました。とがるに一貫している青さや刹那的な部分を滲ませつつ、パンクやエレクトロのアプローチを強めた1作だと思いますが、どのような1枚になったと感じていらっしゃいますか。

好きなバンドがアルバム3枚で完結していたこともあって、バンドを始めた時から3枚で1つの大きい物語にしようと思っていたんです。とがるとしては、昨年3rd アルバム『この愛が終わったら、さようなら。』をリリースしたことでひと段落がついて。これまで意図的に設けていた制限が取っ払われて、コンセプトがゼロになったというか。良い意味で白紙になった状態で制作できたので、自分の好きな音楽を詰め込みながら楽しく作ることができたと感じています。

――収録された3曲はいずれも疾走感のある楽曲ですが、その点もナカニシさんの初期衝動的な部分と連動しているのかなと。

一度白紙に戻ったことが良い方向に作用していると思いますし、作っている時はメロコアをかなり聴いていて。それに自分が好きなブレイクビーツの要素を足したら、オリジナリティのある作品になりましたね。

――一見組み合わせることが難しそうなメロコアとブレイクビーツをミックスする発想は、どこから生まれたんですか?

啓示や天啓と呼んでいるんですけど、有難いことに僕は突然発想が下りてくるタイプで。緻密に理論的に考えたというよりも、下りてきたので仕方ないって感じでした。「きみに青をあげるね」は分かりやすくメロコアのパートからブレイクするので、繋ぎ目は工夫しましたし、難しかったですけど。

――ジャンルミックス的な音像や3作を経た再スタートであることも含め、今作は挑戦的な部分も大きかったと思うのですが、いかがでしょう。

好きな音楽の方向がバラバラだったので、これまで楽曲に落とし込むことは無理だと思っていたんですよ。でも、自分で勝手に諦めていた組み合わせをトプシ(トップシークレットマン)やmoreruが完成させて。同世代の人たちがそういった挑戦をしているのに僕がやらないのはダサいと思ったし、無理じゃないんだと気づかせてくれた。好きな音楽を組み合わせて、僕なりに方程式を作ることができて楽しかったです。

――『808:Blue』の楽曲はいずれも“青”を冠していますよね。ナカニシさんにとって“青”はどのような表象なのでしょうか。

死や悲しみを表現することが最もプリミティブだという確固たる考えが自分の中にあって。例えば、レクイエムは音楽がエンタメになる以前から存在する歌の意味だし、ブルースだって労働者の辛さが歌になったものじゃないですか。だから、死や終わりがテーマとして大きく存在しているけど、直接的に記すのはアートじゃない。“青春”や“青”はそういったコンセプトのメタファーなんです。

――死や終わり、別れを示唆するワードが“青春”や“青”だと。

あとは、“夏”もよく使いますね。僕が歌っている夏は真っ盛りではなくて、夏の終わりで。エネルギッシュな季節が終わっていく様子は、命っぽいかな。一見冷たそうに見えても実は熱くて強いエネルギーをもっている青い火とか、夕焼け時が終わって夜になる瞬間の空の青さとかも、使い続けているイメージです。

――お話いただいたようなメタファーを用いながら、なぜ死や別れを歌っているのでしょう。

人がいなくなることって、世の中で一番悲しいと思うんですよ。誰かとの別れは人格や考え方の形成に強い影響を及ぼすと考えているし、僕自身そういった別れもあった。それをきちんと残さなきゃいけないんです。あとは、自分が死ぬ前に生きていた証を残したいなって。歌という手間のかかる手段で、印象に残ったことを記している気がします。

「生きていきましょうねと思っています」 とがるの生命力に満ちたライブ

――とがるは毎月自主企画『GUITAR』を開催されていますが、同企画はナカニシさんが「バンドとは、ライブとは」と向き合うイベントだと推測していて。とがるにとって、ライブはどのような存在なのでしょう。

そもそも音楽って珍しいなと思っていて。例えば、絵画だったら時代の流れに合っているか、映画だったら描かれている物語が面白いかのように、他のアートは比較的評価基準が1つに定まっているじゃないですか。でも、音楽は評価基準が複数あるから難しいと思うんですよ。どんなに音源が良くてもライブが良くなかったら続けられないし、ライブが良くても音源が良くなかったら広まっていかない。だから、芸術的な作品制作の側面ももちろんですけど、身体的なライブも大切だと思っています。

**――**後者の側面を大切にするための自主企画だと。

そうですね。バンドに関しては良い音源を作り続けて、その思想が投影された企画をやり続けることが1番プリミティブだと思っていますし、僕はそれを評価してもらいたい。曲も演奏も良いことを表現するためには企画をやるしかなくて、ライブは音楽活動の中で基本になるものだと思っています。

――現在とがるはナカニシさんのソロプロジェクトですが、バンドでプレーすることを重視していると感じています。それはなぜなのでしょうか?

これまでにトラックを作ったり、ビートを打ち込んでライブをしたこともあるんですが、やっぱり大きい音を出してギターを鳴らすことが楽しかったんです。自分の性格も含めてバンドって難しすぎるなと思ったことも、実際にバンドがポシャったこともあるけど、色々な出会いを経て今はバンドになりつつある。僕が考える音楽の演奏は、コンマ何秒のズレとかに美味しい所が詰まっているんですよ。そういったプリミティブな表現をする上で、バンドが必要だったっていう。

――これまでのお話で“プリミティブ”というワードが登場していますが、歌の始まりである悲しみを歌っていることや、バンドの原初的な形としてライブと音源を大切にしていること、根源的な表現としてバンドで活動していること、これら全ては根本を重要視するという1点で繋がっていると感じました。

5年間活動を続けてきて、近道しようと思うとうまくいかないなって。1番基礎的な部分を一生懸命続けることが大切だと思っていますね。

――9月20日(金)東京・下北沢THREEよりとがる主宰のレーベルluvによる新企画『國』がスタートします。同イベントはどういった思いで始動させたのでしょう。

詳しいことはnoteにも書いたんですが、ジャンルに縛られてやりたい企画ができないのが嫌で。『GUITAR』とは別の名前で、シンプルに楽しい企画をやりたいと思って始めました。

――『808:Blue』のいわゆるジャンルミックス的なモードも『國』と連続しているように思うのですが。

前から『國』の構想はあったんですけど、潜在意識的にギターロックが中心になっていたというか。僕の好きなアーティストを勝手に集めて、お客さんが楽しめる空間を間違いなく作る自信がなかったんです。だけど、『808:Blue』ではこれまで無理だと思っていたものを昇華できて。まだ怖い部分もありますが、挑戦してみなきゃなと。

――いざ『國』の開催に踏み切ることができた背景には『808:Blue』が大きかったんですね。とがるのライブを通じて表現したいことを聞かせてください。

色々と意味はありますけど、一番伝えたいことは生命力です。人外めいた音量が出ていますし、どこか自分を壊さないとそういった音は出ないと思うんですよ。そもそも歌は抽象的ですが、説明しなくとも霊的なエネルギーを受け取ってくださっているなと感じていて。難しい議論は無しにして、生命力を受け取ってもらいたいですね。

――とがるの音源が表象しているものが別れであるならば、ライブが表現しているものは生なのかなと。

ギターのたもつくん(Zanjitsu)と「ライブをする理由として、生存確認って大きいよね」って話をしたことがあって。「私はそれなりに生きています」とお伝えしたいと思いますし、ライブは遠方に住んでいたりSNSでしか交流したことのない方と会える機会なので、死とは正反対の営みですね。とがるの歌は「暗い」と言われることも多いですけど、ある程度は頑張りましょうと歌っているつもりで。生きていきましょうねと思っています。

全組への愛が爆発する 9月29日(日)『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

――9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』が開催されます。対バン相手はQoodow、Khaki、Acidclank、Hammer Head Shark、the bercedes menzの5組となりますが、特に気になるアーティストを教えてください。

面白いことに全組好きです。特筆して言うなら、Hammer Head Sharkの旭くん(後藤旭)はとがるのサポートをしてくれたこともありますし、the bercedes menzもよく対バンしているので、安心するなと。

――改めて、9月29日『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』に向けた意気込みを聞かせてください。

EPの曲は全部やるつもりですし、今の音楽性を発展させた新曲も制作していて。多分その曲も披露できると思うので、ぜひ観に来てほしいです!

――10月11日(金)東京・新宿Marbleから『808:Blue』を携えたツアー『808:Blue RELEASE TOUR 2024 feat. GUITAR』がスタートします。どういったツアーにしたいですか?

去年は全然ツアーに行けなかったので、久々に皆さんに会えたら良いなと思います。

取材・文=横堀つばさ

9月29日(日)開催『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

出演:Acidclank / Qoodow / Khaki / the bercedes menz / Hammer Head Shark / とがる

OPEN 15:30/ START 16:00

ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 +1DRINK(¥600)

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