1作ごとに変化する音楽性もソロとバンドセットの双方で展開されるライブもAcidclankの自由さを体現している。4月に突如としてリリースされたEP『TOXIC』は、そんなAcidclank流のポップが詰め込まれた1枚である。

それではそもそもAcidclankにとってのポップとは何なのか。なぜソロとバンドを横断しながら活動しているのか。Acidclankが自身をプロジェクトと銘打つ理由とは。

9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにてQoodow、Khaki、the bercedes menz、Hammer Head Shark、とがると共演する『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge ShareではAcidclankにたっぷりと話を訊いた。

「歌えるくらいの良いメロディーが入っていればポップ」Acidclankのポップを詰め込んだ『TOXIC』

――4月に発表されたEP『TOXIC』はサプライズでリリースされた1枚ですが、事前に情報を公開しなかった理由は何だったのでしょう。

単純にタイミングもあったんですが、前作の『Abduction』もサプライズでリリースしていたので、連続でのサプライズリリースは意外性もあるかなと。

――そもそも前作も含めてサプライズでリリースしようと思ったキッカケは?

世の中的にシングルを何枚か発表した後、アルバムをリリースするのが当たり前になっていると思うんです。それと同じことをしても面白くないと感じる部分があって、逆張り的にサプライズを狙った感覚ですね。

――Moriさんとしては、アルバムを通して聴いてほしいという思いが強いと。

やっぱり1枚を頭から最後まで通して聴いて欲しいですし、本来はそうあるべきだとも思っています。プレイリスト文化を否定するわけではないですが、狙いとしては流れを楽しんでほしいなって。

――アルバムの流れを大切にしてほしいという願いは、Moriさんご自身の音楽の聴き方に由来しているのでしょうか?

そうですね。僕はPink FloydやKing Crimsonをはじめとしたプログレッシブ・ロックが好きで。そういったジャンルは作品を通して聴くことにストーリーがあると思いますし、近しいものを表現したいとも考えています。

――『TOXIC』のリリースから3カ月ほどが経過しますが、改めてどのような手ごたえをお持ちですか。

Acidclankはマッドチェスターやトランス、EDMなど様々なジャンルをやっているんですが、中心にあるのはポップなメロディーだと思っていて。『TOXIC』はポップに振り切ることで、改めてAcidclankを再定義する1枚を目指しました。

――このタイミングでAcidclankのポップを再提示しようと思った理由は何だったのでしょう。

前作の『Abduction』はポップよりも、レイヴカルチャーやオルタナティブな側面にターゲットを絞っていたので、今回でギャップを見せることを狙っていたんです。

――Acidclankの中心にあるのはポップなメロディーだというお話もありましたが、エレクトロやトランスなどにポップのエッセンスを加えている背景は?

僕はもともとエレクトロの系譜が好きで音楽を始めたんですが、エレクトロの中でもメロディーがあるものが好きで。一番好きなAphex Twinもメロディーがはっきりしていて、ピアノだけで聴くとすごく綺麗なんですよ。なので、そういったメロディー主体の曲をずっと作っていますね。

――メロディーの存在がMoriさんの考えるポップと結びついているということでしょうか。

ええ。歌えるくらいの良いメロディーが入っていればポップだと考えています。

――『TOXIC』に収録されている「Altair」はバンドサウンドが印象的な楽曲ですが、作品を通じてバンドとエレクトロのバランスは意識されているんですかね。

バランスはそこまで意識していませんが、コンセプトを守りながらも揺さぶりをかけたいと思っていて。例えば『Abduction』の最後の曲の「Hyper Era」は日本語の曲ですし、1枚の中でスパイス的な楽曲を入れることは狙っています。

――ここまでのお話でPink FloydやKing Crimson、Aphex Twinなど影響元となったアーティストの名前が登場していますが、Acidclankの活動を通じてそういった音楽を再構築していく感覚も大きいのかなと。

僕が聴いてきたものをリスペクトしつつ、今の感じで再現するイメージでやっています。最新の音楽を常にインプットしてアップデートしながら、自分の解釈を通じてアウトプットしていると思いますよ。

――Acidclankの音楽性はアルバムごとに変わってきた印象を抱いているんです。それはMoriさんが吸収している音楽と連動している部分があるんですか。

Acidclankが僕1人のプロジェクトなので、モロに連動しているかな。聴いている音楽をリアルタイムで反映させやすいのもソロでやっている理由なんですけど、時々でインプットした音楽がアウトプットに繋がっていますね。

――Moriさんはジャケットやグッズ、フライヤーなどのコレクティブも制作されていらっしゃいますが、これらはどういったイメージで作られているのでしょう。

ジャケットにしろグッズにしろ、統一感を出すことを意識しています。Acidclankのルーツはマッドチェスターやレイヴカルチャーにあるので、90年代イギリスのクラブイベントのフライヤーをイメージしていますね。

**――**Acidclankをきっかけにトランスやレイヴのカルチャーに触れてほしいという思いもあるのだろうなと。

そうですね。きっかけになって欲しいですし、そういったムーブメントが起これば良いなとも思っていて。僕はムーブメントど真ん中の世代ではないし、来てくれる方もマッドチェスターをリアルタイムで体験していたような上の世代のお客さんが多い。格好良い音楽だからこそ若い世代の人に観てもらいたいと思っている部分もあります。

「異質なことをやれたら」ソロでもバンドでもAcidclankを貫く理由

――Moriさんが触れてきたカルチャーを表現する一つの場がライブだと思うので、ライブについても聞かせてください。まずはMoriさんのライブの原体験を伺いたいのですが。

実は頻繁にライブへ足を運んでいたわけではなかったので、これといった原体験もなくて。ライブよりも部屋で音楽を聴いている方が多かったかな。

――お話を聞いて、音源への思いが強いのかなと感じました。

音源が大事というよりは、ライブはライブ、音源は音源で全く別物だと思っています。僕はAcid Mothers Templeが好きなんですけど、彼らのライブはほとんどインプロ(インプロヴィゼーション)じゃないですか。その姿勢に感銘を受けましたし、音源を再現するよりもインプロを含んでいた方が面白いなっていう。

――ライブならではの表現を目指しているということですね。

曲単位で演奏するのではなく、30分、40分のライブ全てをひっくるめて1つの単位だと考えていて。例えるとDJみたいな。なので、繋ぎも大事にしていますし、家で音楽を聴くだけでは味わえない体験にしたいと思っています。

――Acidclankはバンドセットとソロセットの両方で活動されていますが、バンドセットでもDJ的な感覚がある?

どこにインプロを入れるのか、曲間をどう繋げるのかなどを、セットを問わず詳細に考えながら組み立てるようにしていますね。ガチガチに音源を再現するわけではないヒリヒリ感を出したいなと。

――バンドセットとソロセットでアウトプットが変わってくると思いますが、それぞれの形態でどのようなポイントを意識されているのでしょう。

そもそもソロとバンドは全く別物だと思っていて。僕がソロで演奏している曲って、音源があるわけではないし、ほとんどインプロなんですよ。なので、ソロの方はバンドでできないドラムンベースやIDM、ノイズをやっています。感覚的には別アーティストくらいの気持ちです。

――名義を変えてソロで活動する方もいる中で、Acidclankの名前を貫いていることに拘りがあるのでしょうか。

名義を変えようとも思ったんですけど、いろいろなジャンルをやっているよく分からないものがAcidclankっていう根を植え付けたいなと。それぞれのライブを観てくれているお客さんも「全然違うね」と言ってくれるし名前を分けてもいい気もするけれど、やっぱり得体の知れないものになりたいんです。

――得体の知れないものというのは、分からないことに由来する面白さを感じてほしいみたいなイメージ?

そうですね。「何でもやっているんだな」みたいな。その中でも、メロディーはどちらのセットでも押し出しているポイントではありますし、自分のルーツを実感してもらえたらいいなって。

――ソロセットライブでの理想像を教えてください。

最近はライブで使っているモジュラーシンセのセッティングも形になってきましたし、ライブ運びも分かってきたと感じていて。ソロだとライブハウスだけではなく、クラブで演奏することも多いので、DJに挟まれた時でも印象に残るライブをできるようになることが目標です。

――「DJ」というワードが度々登場していますが、DJをやる選択肢もある中で、ソロセットで演奏しているのはなぜなのでしょう。

せっかくモジュラーシンセというライブ向きの楽器があるので、やっぱりライブがしたいんですよね。

――ライブがしたいというのは?

曲を流すというよりも曲を作っていくというか。例えばFloating Pointsのマシンライブを観ると、すごいな、格好良いなって思うじゃないですか。そういったハード機材を使ったライブに憧れている部分もあるのかもしれないです。

――Acidclankはプロジェクトと銘を打たれていますが、バンドとプロジェクトの違いは何だと考えていますか?

バンドはメンバーがいて、一緒に曲を作ることが前提になっていて、音的にやれることの制限が出てくるじゃないですか。でも、プロジェクトは僕1人だからバンドサウンドだけではないいろいろなジャンルを自在にできることが強みかなっていう。

――自由度の部分に違いがあると。自由にAcidclankの活動をしていきたいと考えたのは、どのタイミングだったのでしょう。

もともとAcidclankはソロでスタートして、途中で3P3Bに所属しバンド編成になったんです。バンドをやる楽しさをそこで感じた一方で、いろいろな音楽を作りたいなという反動も大きくて。バンドを経験したタイミングでソロが合ってるなと思いました。

――バンドサウンドに制限されないことにやりやすさを感じたんですね。

やりやすし、たくさんのバンドがいるからこそ埋もれちゃうと面白くないなって。

――冒頭でお話いただいた逆張り的な要素もあると思いましたし、実際Acidclankはソロでもバンドでもプレイできる点で絶妙なポジションにあると思うんです。そういった中で、この先Acidclankをどういったプロジェクトにしていきたいですか?

比較できるものがないようなアーティストになりたいとは思っていますし、今の時点でもAcidclankはいろいろなバンドからはちょっと浮いているというか、変な活動をしている印象を持っていると思うんですね。そこをキープしながら、もっと異質なことをやれたらいいな。

「イベントの良いスパイスになれたら」『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』に向けて

――9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』が開催されます。対バン相手はQoodow、Khaki、the bercedes menz、Hammer Head Shark、とがるの5組となりますが、特に気になるアーティストを教えてください。

Khakiはよく名前を聞くので、楽しみにしています!

――改めて、9月29日『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』に向けた意気込みを聞かせてください。

Acidclankは6バンドの中でもジャンル的に違っている部分があると思うので、違いを押し出してイベントの良いスパイスになれたらと思います。

取材・文=横堀つばさ

9月29日(日)開催『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

出演:Acidclank / Qoodow / Khaki / the bercedes menz / Hammer Head Shark / とがる

OPEN 15:30/ START 16:00

ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 +1DRINK(¥600)

チケットはこちら

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