“ハードコアJ-POPバンド”と称されている3人組・the bercedes menz。6月に彼らが同時リリースした「行為する惑星」と「SMAP」は、そんな彼らの“邦ロック”や“J-POP”に対する視線を読み取ることができる2曲である。バンドの危機感から生まれたという同作は、シニカルに、しかし揺るぎない愛を持って、the bercedes menzなりに時代の空気感を捉えているのだ。

9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにてQoodow、Khaki、Acidclank、Hammer Head Shark、とがると共演する『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareではkazunari wada(Vo,Gt)とnodobue tanaka(Ba)に話を訊いた。

バンド初のインタビューを通じて、彼らが見据えるものを読み取っていただきたい。

危機感から生まれた「行為する惑星」と「SMAP」 今の時代の表現として

――6月に「行為する惑星」と「SMAP」が同時リリースされました。この2曲は音楽性としては異なりながらもメッセージ性の部分で両A面的なニュアンスを感じたんですが、なぜ同時リリースにしたのでしょうか。

**kazunari wada(Vo,Gt):**この2曲は今までとは方向性を変えて、明確にリスナーを意識した楽曲で。全然違う楽曲ではあるんですけど、話題性を獲得するという単純明快なテーマがあったんです。「行為する惑星」はTikTokやShortでもウケが良い感じですし、「SMAP」はタイトルがもはやみたいな。自分たちは事務所に所属しているわけでもなく完全にDIYで活動しているので、より多くの人に届けることを意識しましたね。

――今回の2曲はこれまでのディスコグラフィと比較して一段とポップになったと思うんですが、外へと広げる意識はどういったきっかけで生まれたのでしょう。

**nodobue tanaka(Ba):**風穴を開けるじゃないですけど、どのバンドもやっていないことを狙っている感じはもともとあって。タイミングが相まって、今回はその方向性が強くなったのかなと。

――1stアルバム『ザ・ベルセデス・メンツの幸福な子供たち』(2023年11月リリース)後初のリリースというタイミングも大きかったのかなと感じたのですが。

**tanaka:**このまま続けていてもジリ貧だぞっていう危機感があったんですよね。売れないとバンドを続けていけないと思っていますし、アルバムを出してもハネなかったと感じているので。

――色々なライブに呼ばれることも増えてきたと思うのですが、それでも狙っていたところまでいけなかった感覚の方が大きかった?

**tanaka:**wadaがどう思っているかは分からないですけど、自分としてはそうです。

**wada:**これまでバンドを続けてきた中で最高記録を更新したと思いますし、色々なところから声をかけていただいて認められてきている実感はあります。ただ、新曲を出すにあたって、より過激にやっていきたいというのは総意としてありましたね。

――「行為する惑星」はいわゆる“邦ロック”シーンを意識した楽曲ですが、お2人は“邦ロック”をどのように捉えていて、the bercedes menzをどのように位置づけされているのでしょうか。

**tanaka:**僕は売れたものが正解だと考えているんです。その上で、うちらは基本的にどこまでもカウンターだと思っていて。カウンターとしてメインに対して何をやっていくかが大事かな。

――メインストリームで活躍しているバンドを1つの正解とした時に、the bercedes menzはそれと対峙するバンドであるという感覚が強いと。

**tanaka:**自分はそうですね。

**wada:**確かに僕らはカウンターになると思うんですけど、だからといって“邦ロック”をポジティブに、あるいはネガティブに捉えているのかという話でもない気がしています。年齢をはじめ、全然違うところに存在しながらも、アンチテーゼではない。

――そう、そのバランスが絶妙だと思うんですよ。“邦ロック”のコンテクストをシニカルに捉えている部分がありつつも、曲全体を眺めた時に完全な否定になっているわけではなくて、基盤を踏まえたthe bercedes menzとしての表現になっている。

**wada:**どうしても僕らはサブカルチャー要素が強いですし、文学チックな表現になるんですよね。直接的では無い表現が平成初期の空気感や我々らしさに繋がっているのかなって。バンドのムードにフィットしながらも、僕らなりに今の時代のことを表現できた気はします。

――“邦ロック”シーンと距離を置くことが難しい中で、バンドとしてどういった答えを出すのかが大事だと。「SMAP」はタイトルが何より物語っていると思うんですが、こういった曲を作ろうと思ったきっかけを教えてください。

**tanaka:**もともとSMAPは大好きですし、自分たちの音楽性としてファンクやブラックミュージックの影響を受けている部分もあるので、その点でマッチすると考えたんですね。日本人の誰もが分かる音楽ってサザンオールスターズやSMAP、嵐くらいじゃないですか。だから、それくらいのビックネームに対してオマージュをしないと気づいてもらえないんだろうなと思ったんです。

**wada:**nodobue君から「やばいな」ってデモが送られてきて。それぞれのパートが何をイメージしているのかの解説も入っていましたし、普段はボツになる曲もあるんですけど、これはやるしかないなと。

――「SMAP」も「行為する惑星」と同様に一段階ギアを上げる楽曲だと思うのですが、このタイミングでリリースすることにした理由は何だったのでしょう。

**tanaka:**構想としては前からあったんですよ。で、今回リリースしようと思えた背景には先ほども申し上げた通り、アルバムがハネなかったことへの危機感がありました。あとは、権利関係についていろいろと調べる中、ちょうどその辺が曖昧になっている時期で。タイミングが噛み合ったんですよね。

「各シーンの楽しい部分が一つのフロアに集まってくれれば」 進化を続けるthe bercedes menzのライブ

――自主企画『bercedes boys&girls telepathy club vol.1』の開催や君島大空とのツーマンなどを経た今のthe bercedes menzのライブ観を伺っていければと思うのですが、まずはお二人のライブの原体験を教えてください。

**wada:**大学生になって初めてライブハウスに行って。ライブってこんなに滅茶苦茶なんだと思いました。

**tanaka:**僕は音源が先行していたタイプではあるんですが、一番最初のライブは中学生の時に行ったthe band apartでした。純粋にデカい音を聴きたいと思って地元のライブハウスに足を運びましたね。

――tanakaさんはXでSuiseiNoboAzの話をされていたと思いますが、ライブスタイルに影響を受けているアーティストを聞かせてください。

**tanaka:**ほかの2人は全く通ってないんですけど、僕はASPARAGUSですね。自分たちのライブは曲間が緩いというか、悪く言うとショーアップされていない状態だと思うんですよ。でもASPARAGUSのライブは曲の良さで構成されていたという信頼があるので、それでも良いかなと思えている。現状として自分たちのスタイルが固まりきっていないんですけど、モデルケースの1つです。

**wada:**Age Factoryかな。フロントマンとしてのステージングや表情、楽曲に対して感情を取り繕わずに吐き出す感じはthe bercedes menzにも合ってるなと。僕は人前に立つのが得意ではないですけど、憧れていますね。

――ステージに立つことが苦手という話もありましたが、ライブをすることは心理的なハードルもあると思うんです。そういった中で、ライブに対してお2人はどういった思いを抱いているのでしょうか。

**wada:**貴重だと感じています。僕らは顔出しをしていないので、ライブハウスに行かないとお客さんに会えないですし、お客さんは僕らの顔を見ることができない。でも「ステージングが良かった」「ドラムがすごかった」と言ってもらえると、ライブを通じて今まで気づいていなかった新しい自分たちを発見できるんですよ。手前味噌ですけど、「メロい」って言ってもらえることもありますし(笑)。

**tanaka:**単純に楽しいですし、ライブ中もライブ後もリアルタイムでレスポンスを知ることができるのは大きいかな。僕は裏方気質なんですけど、やっぱり人前で演奏してワーッとなってもらえると楽しいです。

――レスポンスが可視化されることでライブに対する苦手意識も変わってきたと感じたのですが、いかがでしょう。

**wada:**このバンドを始める前はリードギターがいたので、バッキングギターをしながらも歌がメインだったんです。そこから3人で活動するようになって、純粋に技術的な負担が増えて。でも活動を続けるうちにやり慣れてきて、真っ直ぐ歌えるようになった。だからこそ、先ほど話したような感想も出てきたんだと思いますね。

**tanaka:**もともと音源制作チームとしての比重が高いので、自分としてはライブバンドではないと思っていたんですけど、「音源よりライブが良かった」と言ってくださる方も増えてきていて。そういった意味では、ライブバンドとしての成長も感じています。

――バンドとしてライブの成長を感じている真っ最中だと思いますが、the bercedes menzが目指すライブの姿を教えてください。

**wada:**2月から「little black dress」というアイドル曲でサイリウムを振ってくれる方が現れたんですよ。僕らは激しい曲が多いのでモッシュやダイブも起きて欲しいですけど、棒立ちで観てくれている人もいる。そういった沢山の楽しみ方が滅茶苦茶に混ざり合っている景色を大きい場所で見たいです。イメージとしてはハバナイ(Have a Nice Day!)とかが近い感じ。

**tanaka:**お客さんそれぞれが好きなように楽しんでくれるのが一番です。うちらは特定のシーンに明確に属しているわけではないので、各シーンの楽しい部分が一つのフロアに集まってくれれば良いなって。あとは、影響を受けたダンスミュージックを作りたい気持ちが強くあるから、そういう風に音楽が機能してくれたら嬉しいですね。

「元を取れたと思ってもらえるライブに」 9月29日(日)『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

――9月29日(日)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』が開催されます。対バン相手はQoodow、Khaki、Acidclank、Hammer Head Shark、とがるの5組となりますが、特に気になるアーティストを教えてください。

**wada:**Hammer Head Sharkととがるは共演したこともありますし、観るたびに変化しているバンドだと思っているので楽しみです。

**tanaka:**私はKhakiがthe bercedes menzと対極にあるバンドなんじゃないかなと思っていて。Khakiはスマートで格好良いと思うんですけど、僕らは泥臭いイメージというか。その2点間にQoodowやとがる、Hammer Head Sharkがグラデーション的に存在していると思うので、どういったシナジーが起こるのか楽しみです。Acidclankは個人的にモジュラーシンセへの憧れが強いので、セットも含めて余すところなく楽しめる気がしますね。

――Acidclankとtanakaさんはダンスミュージック的な点で共鳴する部分もあるのかなと。改めて、9月29日『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』に向けた意気込みを聞かせてください。

**wada:**元を取れたと思ってもらえるライブにします。

**tanaka:**wada良いこと言うなと。

**wada:**嘘でしょ(笑)。でも、それは大きいよね。

**tanaka:**来てよかったと思えるくらい楽しんでもらいたいです。

取材・文=横堀つばさ

9月29日(日)開催『LOOSE PLAY FESTIVAL vol,2』

出演:Acidclank / Qoodow / Khaki / the bercedes menz / Hammer Head Shark / とがる

OPEN 15:30/ START 16:00

ADV ¥3,500 / DOOR ¥4,000 +1DRINK(¥600)

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