Black petrolのMC、DUCK HOUSEのメンバーとしても活動し、多様なアプローチを探究し続けているSOMAOTA。そんな彼が8月にリリースした「Clouds」は音楽を続けることの苦悩を吐露した1曲であり、SOMAOTAのパーソナルな側面が垣間見える。

9月24日(火)に渋谷・TOKIO TOKYOにてyhojin、jean、Khamai Leonと共演する『FREE!!! vol,26』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareでは、SOMAOTAに話を訊いた。

新たなライフステージに進んだSOMAOTAの行く先を、ここに記す言葉たちから確かめてほしい。

――8月28日(水)に「Clouds」がリリースされました。自問自答するようなリリックを繰り返す内省的な側面と柔らかさが共存する1曲だと感じましたが、SOMAOTAさんはどういった作品になったと感じていますか?

DUCK HOUSEと何度も共作を重ねてきた中で、1番良い形に仕上がった曲だと感じています。ドラムやシンセを含む、生音と打ち込みの融合を理想的なバランスでできたんじゃないかなと。

――約4年ぶりとなる完全ソロ名義の楽曲「六つの橋」のリリース(2024年5月リリース)を経てのDUCK HOUSEとの共作ということで、また違ったモチベーションもあったと思うのですが。

8月末にシェアハウスでもあるDUCK HOUSEを離れて、東京に引っ越したんですよね。だから「Clouds」はお別れソングでもあって。ただ、東京に引っ越すと周りに話したら「バンドはどうするの?」とよく聞かれるので改めて伝えておきたいのですが、今後もSOMAOTA、DUCK HOUSE、Black petrolそれぞれの活動を全て頑張っていきたいと思っています。

――前作「六つの橋」が新たなライフステージに行くことを歌った曲だったことを考えると、本来の順番としては「Clouds」が先で「六つの橋」が後に来るように感じました。

そうですね。仰る通り、「六つの橋」が現時点の心情であり、「Clouds」は昔の自分に立ち返って書いたお別れソングというのが正しい気がします。今後は「六つの橋」の歌詞にあるようにパレスチナの事など、社会的なトピックに言及せざるを得ないと思っているんです。生きていたら税金を払わなきゃいけないし、物価は上がっていくし、語る範囲を拡大する必要があるので。

――社会的な情勢に目を向けようと思った背景には、環境が変わったことや覚悟が決まったこともあるのかなと。

まさに。以前、経営者の知り合いが「会社を大きくするためには守る範囲を増やさないといけない」と話していたんですよ。それと同じように、自分に責任が伴うにつれて目を向ける範囲が広くなっているんだと思います。

――「Clouds」がこれまでの共作と異なり内省的な楽曲になっているのは、お別れソングだから?

内容としては家族のことを歌っているので、結果的にって感じですかね。芸術活動全般に言えることだと思うんですけど、音楽を続けていくことは犠牲を伴うものじゃないですか。音楽と生活が振り子みたいに行き来する中で、どっちに行っても満たされない気持ちが強かった時に書いた曲なんですよ。DUCK HOUSEの3人は、それぞれ心の中に小部屋がある気がしていて。そういう寂しい部分を抱えた3人の良いところが集まった1曲なんじゃないかなと。

――DUCK HOUSEの皆さんの中には元来寂しい部分があったにもかかわらず、これまでポジティブな作風になっていたのはなぜなのでしょう。

正直なところ、なんでポジティブな作品だったかは分かっていなくて。マイナスとマイナスをかけるとプラスになるみたいに、3人で集まるとポジティブな気持ちに不思議となるんですよ。ただ、自分たちのパーソナルな部分を表現したいという気持ちが段々と強くなっていった結果、これまでのポジティブな曲に対してバランスを取るように「Clouds」が完成したんだと思います。

――お話いただいた通り、「Clouds」のリリックには家族に対する愛情が溢れていると感じています。一方で<君の目を背けた無数のブルー 会わなかった時の本当を>の一節のように、どこか後ろめたい感情も受け取ったんですね。大学を休学するにあたって家族と喧嘩したというお話も拝読したのですが(※1)、そういったポイントも繋がっているのでしょうか。

僕は作者なので解釈の正誤について言及はできないですけど、そういった側面はあるかもしれないです。ただ、家族というテーマは僕の中に一貫してあって。これまで家族をテーマに歌った曲は自分の家庭環境、つまり家族と生活を共にしていた頃=過去の話をしていたんですね。でも今回は音楽活動に対する思いを決めたタイミングだったこともあって、「今後、どんな未来を歩んでいきたいか」と将来の事を考えていたら、自然と顔が浮かんできたという。

――SOMAOTAさんが家族を歌っている理由は?

先ほどおっしゃっていただいた通り、僕はホワイトカラー出身かつ、頭の良いと言われる学校を卒業しているので、世の中的なラッパーに対するイメージとは正反対の存在だと思うんですよね。そんな自分がラップで言えることはドラッグやパーティーや犯罪のことではなく半径数メートルの世界、つまり家族や友達など身の回りのことだなと。「革命を起こしたい」などの大きなテーマではないですが、身の回りの小さな問題にも十分切実さを感じているので自然と歌詞の中に出てくるんだと思います。

――根っこに存在しているのが家族なんですね。今回、音楽活動のギアを上げることや東京に拠点を移すことを決めたキッカケは何だったんですか?

2023年の11月にBlack petrolとKingo、DinoJr.の3組で『anthem』という企画をやったんですね。その数日後に突然Dino君から電話が来て「東京に来たら?」と言われて。生活もガラッと変わるし、東京に行ったら行った手前、音楽活動を本気でやると腹を決めないといけなくなるので、言われたタイミングでは踏ん切りが付かなかった。でも、翌朝起きたら「行くか」みたいな。

――急に意志が固まった?

固まりかけていた決断の最後の一歩を、Dinoくんの言葉に押してもらったというか。僕は8割9割自分で意志を固めた上で、最後は自然に身を任せるタイプなんですよね(笑)。

――ここまでお話いただいたようにSOMAOTAさんは新たなステップに進もうとしていると思うんです。そういった中で、ソロとDUCK HOUSE、Black petrolの活動に対して、それぞれどういった心境を抱えていらっしゃるのでしょう。

どれも同じ熱量でやっているのは前提の上で、ソロに関しては「こいつは何なんだ」と思われるような活動をやっていきたいなと(笑)。数年前に「トリッキーな動きをするMC」みたいにウェブか何かで紹介されたことがあってその表現がしっくりきてますね。あまりキャラクターや一貫性を気にせずに好きなタイミングで好きな曲を出していきたいです。今後は、今までメインで活動していたライブハウスのシーンを飛び越えてクラブイベントにも出ていきたいと考えています。

**――**Black petrolとDUCK HOUSEについてはいかがですか?

Black petrolはメンバーも7人いるので、一ラッパーとして参加している感覚が強いです。なので、ラップの純粋なスキルや新しさを追究したい。DUCK HOUSEはライブハウスとクラブの懸け橋的存在を掲げているのもあって、ソロと近い部分もあるのかな。2バンドともフロントマンではあるんですけど、Black petrolは上手いラッパー、DUCK HOUSEは演説家みたいな役割ですね。それぞれ違った側面が見れると思います。

――9月24日(火)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『FREE!!! vol,26』が開催されます。TOKIO TOKYOやイベントに対するイメージを聞かせてください。

TOKIO TOKYOはライブハウスが好きな方だけではなく、カルチャー全般が好きな感度の高いお客さんが多い印象です。『FREE!!!』に関しては、無料ということもあって色々なお客さんが来てくれることが魅力かなと。あとは、主催のニイムラちゃんが良い意味で緩い雰囲気なんで、演者同士が仲良くなる場所でもあると思っていて。以前Black petrolで出演した『FREE!!!』(2023年2月開催)をキッカケにKingoと出会い、それが「anthem」にも繋がっているからお世話になってますって感じです。

――9月24日(火)はKhamai Leon、yhojin、jeanと共演になります。3組に対する印象を教えてください。

Khamai Leonはよく一緒にやっているんですけど、いわゆる変態バンドだと思っています。クラシックの世界を飛び出してバンドシーンに身を置いているところが、彼らの良さなんじゃないかなと。あとは、beja(Key,Gt.)のギターソロを弾く時の顔がすごい好きです(笑)。yhojinは僕のバックDJがメンバーの友達で。声で遊ぶ楽曲が多い印象だったので、それをどうやって再現するのかが気になっています。jeanはこの前イベントで直接会う機会があったんですよ。ストレートなリリックを歌う人たちだと感じていますし、純粋に音楽を楽しんでいるんだろうなって。

――改めて、9月24日(火)『FREE!!! vol,26』に向けた意気込みをお願いします。

簡単に言うと、エレクトロ×ラップを提示できたらと思っています。それはバンドサウンドとは全く違うものになっていて。ぜひ早い時間から来ていただきたいです!

取材・文=横堀つばさ

(※1)https://mag.digle.tokyo/interview/175888

9月24日(火)開催『FREE!!! vol,26』

出演:jean / Khamai Leon / SOMAOTA / yhojin

OPEN 18:00 / START 18:30

TICKET:FREE

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