
映画館を出るあの瞬間や大好きな音楽が流れてきたあの時の幸福感は、満腹に似ている。そんな幸福が詰まった良い音楽=“おいしいおんがく”をコンセプトに掲げる4ピースバンド・chef’sは6月に決意を込めた新曲「デクノボウ」をリリースし、同曲を含む全4曲を収めたEP『Garden Variety』を7月24日(水)に世に放つ。
全4カ所を巡るツアー『chef's 2nd utage Tour』を8月に控え、“おいしいおんがく”をますます多くの人へと運ぼうとしている彼ら。7月31日(水)に渋谷・TOKIO TOKYOにてSano ibuki、Awkmiuと相見える『BONE WEEK WONDER’24』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareではアヤナ(Vo,Gt)と高田真路(Ba)の2人に、「デクノボウ」に込めた思いや“おいしいおんがく”を構成するライブについて語ってもらった。
「選択には後悔も不安もある」 岐路に立つ決意を歌う「デクノボウ」
――4月23日(火)にTOKIO TOKYOにて自主企画『おてまえ』を開催いただいたので、まずは同企画を振り返っていければと思います。“おいしいおんがくの試食会”と題した『おてまえ』は新曲を聴くことができるイベントですが、どのようなキッカケでこのコンセプトにしたのでしょう。
**高田真路(Ba):**そもそもchef’sは『おてまえ』と『東京晩餐会』、『utage』の3つの自主企画を実施していて、毎回ツアー名を変えるというよりも、よりコンセプチュアルにイベントを開催したいと考えていたんです。その上で『おてまえ』は、新しく来てくれた方はもちろん、何度も観てくれている方に喜んでもらえるライブだと考えていて。新曲をやるとあらかじめ発表していた方がノリやすいと思うので、chef’sにとってもお客さんのリアクションを見る良い機会だなと。
――お話いただいた通り、chef’sはコンセプチュアルに自主企画を開催されていますよね。
**アヤナ(Vo,Gt):**もともと去年はライブ活動がなかなかできなかったので、自分たちで企画を打って可能な限りライブをしていこうと話していて。それがそのまま続いている感覚かな。
――chef’sが掲げる“おいしいおんがく”はchef’s以外の音楽も含みつつ総合的に作り上げていくものだと拝読したのですが(※1)、それが自分たちでバンドを呼ぶ自主企画にも表れているのかなと。
**真路:**それはすごくあるかも。僕たちの音楽はロックすぎるわけでもポップに寄っているわけでもないので、どこにでも混ざれるけれど完璧に混ざるのは難しいと思っているんですよ。それだったら自分たちで提案してみようという考えが、chef’sの聴かせ方として合っている気がしています。
――6月12日(水)にリリースされた「デクノボウ」は岐路に立った時の迷いや決意が表れている曲だと思いますが、どのような手応えを持っていますか。
**真路:**chef’sとして4月からライブ活動を再開したことで、1年間止まっていた時間が動き出す感覚があって。動き始めることは何かを選ぶことですし、選択には後悔も不安もある。実はこの曲は前からあったんですが、再始動する今のタイミングで発表したいなと思ってリリースしました。
――「今だな」と思った理由は、chef’sとして再出発する感覚があったから?
**真路:**それも大きいですし、新生活が順調に進んでいる人が周囲に少なかったんですよ。コロナを経て生活リズムや社会に出る意味が今までとは変わったと感じていますし、上手くいっていない人の姿が「デクノボウ」を作った当時の自分の姿とマッチすると思ったので、ここだなって。
――当時の真路さんも選択に迷っていたと。
**真路:**そうですね。大学に入学して音楽活動をするようになり、ゼミやサークルにも入らず淡々と勉強してスタジオに向かう日々を送っているうちに、これで合ってるのかなと思うこともあったんです。音楽で生きていくのか、それとも普通の大学生として生きていくのかという当時の選択が、バンドの岐路と重なったのかもしれないですね。
――実際にしてきた決断を振り返ってみてどう思いますか。
**アヤナ:**私はなんだかんだ今のようになる気がしていました。すごく楽しいですし、正解だなと感じています。
**真路:**僕は1人でも音楽ができるタイプなんですが、バンドという形を選んで。メンバーは家族だと思っていますし、chef’sという帰ってこれる場所が自分の音楽人生に存在しているだけで成功かなと。
――chef’sの歌詞の特徴として句読点の使い方があると考えています。歌詞に句読点を付ける方は多くないと思うのですが、真路さんはなぜ歌詞に句読点を付けているのですか?
**真路:**歌詞を書き始めた高校生の頃から句読点を付けていたので、僕の歌詞では句読点がないと違和感を持つくらいで。僕は文を書くのが下手くそだから、句読点を付けないと自分の中で整理がしにくい部分もあるんですよね。意味が途切れたり、二重の意味がある前で区切ることで、「ここにこんな意味を込めたよ」が分かりやすく伝わると思っています。
――句読点を1つの合図として使っている?
**真路:**それもありますし、歌詞優先でメロディーを組んでいくことも多いんです。歌を聴いた時、すぐに何を歌っているのかが分かるようにしたい。歌詞を読んで分かってもらいたいから、読みやすさのために句読点があるのかもしれないな。
――文章としても独立した歌詞を書きたいと考えたキッカケは何だったのでしょう。
**真路:**僕はエッセイをよく読むんですが、特にオードリーの若林さんのエッセイが好きなんです。殴り書きに見えるけれど感じたことがそのまま文章になっているし、あることを言うために別の例えを持ってきたりもしている。その手法は僕の歌詞の書き方と似ている部分があるかなって。誰かの歌詞に影響を受けたというより、エッセイからの影響が大きいですね。
――アヤナさんは真路さんから提示された歌詞をどのように自分の歌に落とし込んでいるのでしょう。
**アヤナ:**私は性格的に感情移入してしまう人なので、感情を込めて伝えられるようにしています。それこそ「デクノボウ」とか、失恋した時のラブソングはめちゃくちゃ共感できるので。
――自分が体感したことのない感情もあると思うのですが、その場合はどうやって消化していますか?
**アヤナ:**その場合は歌っていく中で1つずつ理解をしながら、役になりきる感覚かも。
――「デクノボウ」を収めたEP『Garden Variety』が7月24日(水)にリリースされます。再出発の1枚だと思いますが、どんな1枚になったと感じていますか。
**アヤナ:**今回は0曲目に初めて弾き語り調の曲が入っていて、“野菜盤”というコンセプトに合っているなと。
真路:『NOBODY CALLS ME CHICKEN!』は“肉(CHICKEN)”、『selfish theater』は“魚(fish)”、『space junk』は“ジャンクフードや間食(junk)”のようにフルコースにしている中で、今回は“野菜盤”なんです。その上で今作は一度ロックを作り切りたいと思っていたので、アッパーな曲が多いかな。
――EPの構成も含め、非常にコンセプチュアルに制作されていると感じています。それぞれのコンセプトはどの段階で浮かび上がっているのでしょう。
**真路:**結成の段階である程度は決めていたかもしれないです。例えば『おてまえ』をやろうとか、フルコースを作り終えたらこういうことをしようとかは結成の時点で決まっていましたね。

「人前に立つのは苦手」それでもステージに立つ理由はお客さんの存在
――ここまでは音源についてお伺いしたので、ここからはライブについて訊いていければと思います。まずは、お二人のライブの原体験を教えてください。
**アヤナ:**小学校1年生ぐらいの時に親に連れられて山下達郎のライブに行ったのが初めてだったかな。その後、吉田美和のライブを地元の鎌倉で観た記憶があります。でも、父親もミュージシャンだったので、ライブや音楽は身近な所にありました。
**真路:**僕の1番古い記憶は3、4歳の時に行った風味堂のライブで。子どもたちをステージに上げるパフォーマンスの際、僕はステージには上がらず、他の子どもたちが遊んでいるのを見ていた記憶があるんですよ。3、4歳なのに「ステージではしゃぐのはダサい」と思っていて、本当はみんなと遊びたいのに上がれなかった映像が残っています。
**アヤナ:**素直じゃないね(笑)。
――ステージに上がらなかったことが最初の記憶なのに、今こうしてステージに立つことを選んだのはどうしてだと思いますか。
**真路:**今も人前に立つのはあまり好きではないんです。でも、みんなで1つの空間にいながら音楽を楽しんでいるのが好きで。ライブは会場が大きくなるにつれて、演者とお客さんが離れていくと思うんですけど、今の距離感だと僕たちの楽しさをストレートに伝えられているかなと。会場が大きくなると緊張しますし、自分の世界でプレーしないと恥ずかしくなっちゃいますね。
――アヤナさんはフロントマンとしてステージに立たれていますが、いかがですか?
**アヤナ:**私も人前に立つことが得意なわけではないんですよ。何かを伝えるのは苦手だし、あまり自分に自信もないので。でも、目の前でお客さんが楽しそうにしている様子が見たいので、ライブをしています。
**真路:**アヤナさんは人前に立つのが苦手だと言っていましたが、僕はアヤナさんの魅せ方はすごいと思っています。もちろんボーカルで目立つのもありますけど、ライブ後にアヤナさんと喋りたいというお客さんも多いですし、ステージで輝く人なんだろうなと。だから自信もって(笑)。
――chef’sの“おいしいおんがく”を構成する要素として音源やグッズなどがある中で、ライブはどのような位置付けだと考えていますか?
**アヤナ:**chef’sは曲前の繋ぎを含め音源にないことをするバンドですし、それぞれの実力が出ていると思っています。ライブの臨場感は直接見に来ないと味わえないものだから、ライブは特別感があってより“おいしい”んじゃないかな。
**真路:**音源もライブも形の違う“おいしいおんがく”だとは思いつつ、僕としてはライブがやりたい音楽に1番近い気がしていて。もちろん音源は媒体として完成しているけれど、ライブで聴いて「おいしかったな」と思えた曲を確認するものとして音源が存在していると思っているんですよ。なので、ライブが一番上にあり、付随するものとして音源が位置しているイメージです。
――試食会である『おてまえ』の発想とも近いのかなと。
真路:『おてまえ』もそうですし、今はライブを見てほしいという気持ちが強いかもしれないですね。
“おいしいおんがく”を濃縮した日に。Sano ibuki&Awkmiuと相見える『BONE WEEK WONDER’24』
――7月31日(水)に渋谷・TOKIO TOKYOにて『BONE WEEK WONDER’24』が開催されます。対バン相手のSano ibukiとAwkmiuにはどのようなイメージをお持ちですか?
**真路:**Awkmiuは普段お世話になっているカメラマンさんに激推しされていて。僕も聴いていて良い音楽だと思っていましたし、このタイミングで交わることができて嬉しいです。
**アヤナ:**高校生ぐらいの時からSanoさんのことをフォローしていたので、対バンが決まってビックリでした。
**真路:**しかも、僕らのことを手伝ってくれていた人がSanoさんのスタッフをしていたんですよ。chef’sと縁がある2組と共演できるのが楽しみですね。

――改めて『BONE WEEK WONDER’24』に向けた意気込みをお願いします。
**アヤナ:**なかなかない対バンになっていると思うので、来ていただいた方にchef’sの“おいしいおんがく”を届けたいです。
**真路:**ツアー直前で仕上がっている僕たちを凝縮してお届けできたらなと。対バンも楽しみつつ、今まで作ってきた“おいしいおんがく”を濃縮した日にします!
――8月6日(火)愛知・名古屋UPSETより、東名阪仙を巡るツアー『chef's 2nd utage Tour』が開幕します。ツアーをはじめ、どういった下半期にしたいですか?
**真路:**結成からこれまで自分たちのペースで頑張ってきて、また新しいステップに進める後半戦にしたいですね。もっと色々なものを吸収したいという気持ちが今は強いですし、ツアーを終えて新しい何かが見える気がしています。
**アヤナ:**たくさんのライブや企画を通じて、幅広いチャレンジをしていきたいです。

取材・文=横堀つばさ
(※1)https://note.com/imalab/n/ndec1408d2853
7月31日(水)開催『BONE WEEK WONDER’24』

出演:chef’s / Awkmiu / Sano ibuki
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV: ¥3,000 + 1D / DOOR: ¥3,500 + 1D
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