毎日歩く道の変化と明日への希望を歌う「ミラーボール」や、友人たちと自転車で駆け回った夏を描く「少年讃歌」をはじめ、Sano ibukiの音楽を聴くと脳裏に映像が浮かんでくる。Sanoが7月10日(水)にリリースする「快晴浪漫」は、そんな風景描写が詰め込まれた夏へのノスタルジーが喚起されるラブソングだ。

今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareでは、Sanoが情景描写を通じて世界を描き出す理由や独りぼっちを共有するライブへの思いを語ってもらった。初の自主企画『PAIR』東京編を終え、7月31日(水)には渋谷・TOKIO TOKYOにてAwkmiu、chef’sとスリーマンライブを展開するSano。彼がどのように世界を見つめ、何を届けようとしているのか。じっくりと読んでもらいたい。

夏への郷愁が詰まった新曲「快晴浪漫」。世界の美しさを伝えるための情景描写と感情描写

――6月23日(日)東京・渋谷eggmanにてSanoさん初の自主企画イベント『Sano ibukiツーマンライブ“Sano ibuki vs さのいぶき” 〜PAIR〜』が開催されました。同イベントはバンドセットとソロセットの対バン形式になりましたが、どのようなキッカケで実現に至ったのでしょうか?

もともと独りぼっちに寄り添える音楽がやりたいと思っていますし、実際に僕自身も友達がいなかったので、バンドではなく1人で活動している側面もあって。孤独感を抱えている人たちが安心できる場所にするために、自分自身と対バンするのが良いのかなと。あとは初めての自主企画ということで原点の姿を観ていただきたいと考えて、ソロでもやらせていただきました。

――改めてライブを振り返ってみていかがでしたか?

ソロとバンドでは異なった表現になるので、どのように受け取るべきか戸惑うお客さんもいると思っていたのですが、皆さんが温かく反応してくださって。自分1人をどうやって見てもらうのかというソロと、“塊”のようなアンサンブルを意識したバンドの両面をキャッチしてもらえたと思います。

――7月10日(水)には「快晴浪漫」がリリースされます。一聴で夏の情景が浮かんでくる爽やかさと切ない片想いを歌った歌詞が魅力的な1曲だと感じていますが、どのようなポイントから制作がスタートしたのでしょう。

久しぶりに恋愛の曲を書きたいと思って。その上で僕らしいラブソングを考えた時、“最後のラブレター”をイメージしながら描くことができれば面白くなると考えてスタートしましたね。

――ラブソングを書きたいと思った背景には、明確なキッカケがあったのでしょうか? それとも、これまでの作品を経て自然とそのようなモードになったのですか?

感覚的には両方あった気がします。制作を進める中で「恋愛の曲を書いたほうが良い」と思っていましたし、個人的にも恋愛に限らず大切に思っていた人が目の前からいなくなってしまうことがあって。それをどのようにポップスとして昇華するのかを考えた時、恋愛の曲として落とし込むのが理想的だと考えました。

――「快晴浪漫」に対してSanoさんは『「逢いたい」が溢れた時に それが叶う世界はなんて幸せなんだろうと思います それはもう恋とか関係なくね』とコメントされていましたが、Sanoさんが歌われてきたことはまさしくこのコメントの通りだと思います。「久遠」や「twilight」をはじめ、Sanoさんが「誰かと傍にいたい」という思いを歌っている理由は何なのでしょうか?

性格的に寂しがり屋なのも大きいですし、独りになった時こそ誰かの存在を感じたり、傍にいてくれたことを理解できると思っているんです。孤独ゆえに誰かに会いたくなったり、誰かを求めてしまう。そんなある種自分勝手な部分が根幹にあって、それが楽曲として表れている気がしますね。

――「快晴浪漫」を聴かせていただいた時、私は「少年讃歌」が頭に浮かんで。というのも、前提としてどちらも夏の雰囲気を感じる曲ですし、Sanoさんが描かれている“夏”はカンカン照りの夏というよりノスタルジーや哀愁を感じる夏だと思うんです。その切なさがラブソングのフィルターを通じて表れていると感じたのですが、いかがでしょう。

夏があまり得意ではないことが楽曲にも出ている気がしますし、僕自身太陽や太陽の下で輝ける夏が似合う人に憧れているんです。自分は日陰にいながらキラキラしている人たちを眺めているタイプだったので、そういった人たちや夏という季節自体に何度も手を伸ばしては届かないと感じていて。その感覚を書いているので、自然とノスタルジーを感じてもらえるのかな。

――本来なりたかった存在が夏に近いが故に、"なりたいけどなれない"切なさが楽曲に表れていると。歌詞を見ていくと、<八重歯の似合う君>や<急行列車の9号車>などAメロBメロで丁寧に風景を描写した後で、サビでは<逢いたいんだ。>とストレートに感情を言い切ってしまう緩急が素晴らしいなと思うのですが、風景描写と感情描写の使いどころやバランスに対してはどのように考えていますか?

まさしくその通りで、意識している点ですね。サビでは自分の中にある一番複雑な思いを素直に歌っている一方で、そのピュアな思いが何に由来するのかを情景描写を通じて伝えたいなと。もともと僕は情景描写を使って歌詞を書くことが多かったのですが、様々な楽曲を作ったり、試行錯誤を重ねる中で「快晴浪漫」は現在のバランスに行きつきました。

――情景描写を通じて細部を明確にした上で感情描写をすることで、より楽曲の解像度が上がるということですよね。

そうですね。目を閉じて楽曲を聴いてもらった時、思い浮かんでいる人がより明確になっている状態で感情に訴えかけることが大切だと考えています。なおかつ「快晴浪漫」では、“君が太陽みたいな存在”であることを“太陽”のワードを出さずにいかに説明するかを意識していて。主人公にとって単に空が綺麗だったのではなく、“君が快晴だった”のだと気づいてもらえたらなと。

ーー“君が快晴だった”というのは、Sanoさんが夏に憧れていたという先ほどのお話と繋がると感じました。ここまでのお話からもSanoさんが風景描写を大切にされていることが伝わっているのですが、なぜそのような表現を大事にしているのでしょう。

この世界で生きていかなきゃいけないからだと思います。楽曲を聴いてくれる人は、曲の中で描かれている世界を一番きれいだと捉えてしまうこともある気がしていて。例えばラブソングを聴いた時、その恋愛があまりにも美しすぎて自分の体験で「こんなに美しいことはない」と思い込んでしまう。でも、それは悲しすぎるなと。だからこそ、「現実世界も美しいんだよ」と伝えるために風景を描きたいと考えていますし、楽曲制作時に写真をリファレンスにすることもあります。

――情景描写を通じてフィクションの世界を提示した上で、物語の世界をフィルターにしながら現実世界を捉え直してほしいということですかね。

はい。「快晴浪漫」には<急行列車の9号車>という歌詞が登場しますが、ここで描いている景色を体験したことがない人もいると思うんです。でも、感覚的に分かってしまうし、何かを思い出す気がする。そこで思い出される景色は現実世界、つまり僕たちが生きている世界ですよね。僕自身この世界のことを嫌いに思ってしまうこともあるからこそ、少しでも愛せるようになったらいいな。

「一対一でありたい」Sano ibukiが目指す独りぼっちを共有するライブ

――ここからはライブに対する思いをお伺いしていきたいのですが、まずはSanoさんのライブの原体験を教えてください。

地方出身なこともあってライブに行くことが身近ではなかったんですが、「ライブに行きたい」と思ったキッカケはマイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』のライブ映像です。小学生の頃に映像を観て、歌詞も分からないのに感情が伝わってくることに憧れを持ちましたし、かじりつくように映像を観ていました。

――小学生の頃にライブと出会った後、どのようなキッカケでライブをプレイする側になったのですか?

皆で集まってゲームをするように純粋に友達と一緒にやることとしてバンドを選んだので、自発的に始めた訳ではなかったです。その後上京して絵を描いたり映像を制作したりする中で、自分が綺麗だと思ったことや辛いと思った感情を遠くまで飛ばせる手段を考えた時、自分の声で直接届けることができれば一番美しい景色になると思って。自分の歌を通じて何かを届けたいという思いは現在でも原動力ですね。

――様々な表現方法がある中、音楽やボーカルを選んだ理由は何だったのでしょう。

当時も今でも自分の声に自信がない一方で、率直に色々な人に見つけてもらえたことが大きかったです。聴いてくださる大切なお客さんも、歌ってきたからこそ巡り合えた仲間も財産なんだと思えるようになりました。

――自信があって音楽を選んだというよりも、周囲の人によって自身がついていったと。

未だに悩むこともありますが随分と自信を持てるようになったと思いますし、つけなきゃいけないとも感じています。それでも、僕の声を「好きだ」と言ってくれる人がいる限り、自分の声で届けたいなと。

――まさしく直接Sanoさんの声を届けられる場所がライブだと思いますが、どういった思いでライブに臨まれていますか?

一対一でありたいと思っています。“皆”として捉えるのではなく“あなた”と向き合いたいですし、独りぼっち同士が集まってライブをやっていると感じてもらいたい。ライブが終われば離れてしまうからこそ今だけは大事なものを共有したいですし、良い意味で”明日を生きるための呪い”になってほしいと思って「また会いたい」と伝えていますね。

「一番傍に行けるようなライブに」Awkmiu&chef’sと繰り広げる『BONE WEEK WONDER’24』

――7月31日(水)にTOKIO TOKYOにて『BONE WEEK WONDER’24』が開催されます。対バン相手のAwkmiuとchef’sにはどのようなイメージをお持ちですか?

2組とも僕にはないオシャレさを持っていると思いますし、楽曲も洗練されているイメージがあります。僕は対バンライブでもワンマンライブでも内心はバチバチで。フラットな目線で2組のライブを拝見しながらも、自分の思いを届けていきたいです。

――どんな1日になるのか楽しみです。改めて『BONE WEEK WONDER’24』当日に向けた意気込みをお願いします。

2組がバンドで活動されている中、僕だけがソロでの活動をしていて。裏を返せば、楽曲の持つメッセージをストレートに届けられると考えていますし、その強みを活かして観ていただける方の一番傍に行けるようなライブにできればと思います。

――8月31日(土)には愛知・名古屋ell.FITS ALL、9月23日(月・祝)には大阪・梅田BANGBOOで自主企画『Sano ibukiツーマンライブ“Sano ibuki vs さのいぶき” 〜PAIR〜』が開催されますが、同企画も含め下半期はどういった期間にしたいですか?

楽曲制作をしている最中なので、まずはその作品が遠くまで届けば良いなと思っています。その上で今回は初めてツアー形式でイベントを開催することができて。きちんと聴いてもらえる場所を自分でも模索しながら、1人でも多くの人に自分のやっていることを届けていければなと。

――お話を通じてSanoさんの中で「歌を遠くへ届けていく」という思いが一貫していると感じましたし、その方法としてライブや音源を捉えているのだと思いました。

遠くに行くことも一つの手段でしかないと思っていて。最終目標は僕のことを「大好きだ」と言ってくれる人やこれから出会う人、ライブを観てくれる方に「前からSano ibukiのことを知っていた」「私はこんな音楽が好きなんだ」と自慢してもらえる存在になることなんです。この目的を叶えるために1人でも多くの人に音楽が届けばいいなと感じています。

取材・文=横堀つばさ

7月31日(水)開催『BONE WEEK WONDER’24』

出演:Sano ibuki / Awkmiu / chef’s

OPEN 18:30 / START 19:00

ADV: ¥3,000 + 1D / DOOR: ¥3,500 + 1D

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