
自主企画をどこでやるか。キャパと料金の表を見比べるだけでは決められない、というのは、一度でも主催したことのある方なら実感があると思います。
神戸を拠点に活動する4ピースロックバンド、フリージアン。
2026年の春から夏にかけて、渋谷・宇田川町のライブハウス TOKIO TOKYO でツーマン企画を3回続けて開催し、8月21日には同じ会場で『FREESIAN ONE-MAN LIVE TOUR 2026 オンユアマークス』東京編を行いました。4公演とも平日です。

なぜ会場を固定したのか。ワンマン当日に話を聞くと、「お客さんにとってのセーブポイント」という言葉が出てきました。
きっかけは、ブッキングのメールより前だった
最初の接点は会場からの出演オファーでしたが、バンド側の認識はもう少し前から始まっていたそうです。
「それよりも前に、個人的にはSNSで見ていて。この箱がやってるイベント、面白そうだなっていうのが自然と入ってくる状態だったんです。いつの間にか知ってた、という感じですね」
そこにブッキングのメールが届いて、「あそこのライブハウスだ」とつながったといいます。会場から届いた一通目が、まったくの初対面ではなかったわけです。
会場は、数字と写真では決まらない
会場を決めるとき何を見ているのかを聞くと、事前には確認しにくいものばかりが挙がりました。
「結局、自分たちで一度やってみてどうだったか、なんですよね。外観も内装も、来ないと分からない。音の聞こえ方も、フロアの鳴りも、対バンの演奏を見てみないと分からない。演奏する側としての快適さが、やっぱり最重要なのかなと思います」
「200キャパ、300キャパというのは経験則で何となく分かるんですけど、フロアの形とか柱の位置とかは、やっぱり来ないと分からない。あと、お客さんがどれくらい満足してくれたかも、表情やSNSの反応で何となく分かる。それが重なって『あそこ良かったよな』という判断になってるんだと思います」
つまり、一度出演した会場は、他の候補よりも判断材料がずっと多いということになります。フリージアンがブッキング出演を経てから主催に踏み切ったのも、その順番でした。
なぜ同じ箱で3回か
TOKIO TOKYO には、前回の開催月から2ヶ月以内に次回を開催し、最低3回続けることを条件に会場費が下がる定期利用があります。3回分をまとめて押さえる必要はなく、都度予約で構いません。フリージアンが選んだのはこの枠でした。
ただ、メリットとして最初に挙がったのは料金ではありませんでした。
「同じ会場だからこそ、お客さんが『次どこだっけ』とならない。また来月ここでやる、という分かりやすさがあるのが、この企画のメリットかなと」
「お客さんにとってのセーブポイントじゃないですけど、また戻ってきたらここでフリージアンが見られる、という安心感。同じところでやるメリットはそこにあったかなと思います」

このときフリージアンは、東京と大阪を1ヶ月ごとに往復する形でツーマン企画を組んでいました。会場を毎回変えると、告知もその都度ゼロからになります。固定すれば「いつもの場所で、来月も」と伝えるだけで済みます。動員を積み上げていく企画では、この違いが効いてきます。
会場との関係も理由に挙がりました。
「ブッキングでいろいろ呼んでいただいた機会に対して、それを差し置いて別の箱で主催をやるのは違うよねと。結局、人と人やしなという部分で、こちらもちゃんと主催で借りて使うのが一番いい返し方かなと」
制約について。平日18時までは外音が出せません
TOKIO TOKYO は平日、18時までメインスピーカーを使用できません。モニターは使えるのでリハーサル自体は行えますが、フロアの鳴りを確認できるのは18時以降になります。平日に開催する場合は、この制約を前提にタイムテーブルを組むことになります。
改善してほしい点を聞いたときに出てきたのも、この話でした。
「建物の使用上、リハーサルで外音が出せないじゃないですか。でもまあ、それはしゃあないんちゃうと思ってるんで、別に改善点でもないなと」
3回続けて使うということは、この制約に3回付き合うということでもあります。それでも会場を変えなかった理由については、こう話していました。
「やりやすいし、スタッフさんが自分たちに興味を持ってくれている、好意を感じる。こっちが勝手に思ってるだけでもいいんですけど、そう感じるから、めっちゃやりやすいです」
ワンマンという着地点
3回のツーマン企画のあと、フリージアンは同じ会場でワンマンを開催しました。2026年8月21日(金)、『FREESIAN ONE-MAN LIVE TOUR 2026 オンユアマークス』東京編です。

「東京と大阪を行ったり来たりするツアーがあって、それならワンマンもそりゃここでしょう、と。せっかく同じところでツーマンを重ねたのなら、着地点みたいなものは作った方がいい。それならやっぱり同じ箱じゃないと意味がないんかな、という思考だったと思います」
ツーマンを重ねて、最後にワンマンを置く。会場を固定していたからこそ、この流れが企画として成立しています。
同じ会場を続けるということは、お客さんから見える景色が変わらないということでもあります。そこでフリージアンは、演出のチームを入れ替えました。
「ツーマンのときは照明をずっと会場のスタッフさんにお願いしていて、ワンマンでは関西でずっとやっている同じチームのスタッフを連れてきた。同じ場所でも、内容によってお客さんが受ける印象がどれだけ変わるかを楽しんでもらえたら、というのもあります」
会場は固定したまま、中身で差をつけるという考え方です。定期利用を単に安く借りる手段としてではなく、企画の組み立てそのものに使っている例だと言えます。
渋谷という立地が、そのまま集客の条件になる
関西を拠点にしているバンドにとって、東京公演は遠征を伴います。会場の場所は、それ自体が集客の条件になります。
「遠征で東京まで来てくれる方もたくさんいらっしゃる中で、山手線でパッと渋谷だと来やすい。ここまでの道のりも比較的分かりやすい。周囲にいろんなお店もあるので、ライブだけが目的じゃなくても遊べる場所、というところも意識しています」
「とにかくお客さんにとって安心できる場所でありたい、というのがメンバーもスタッフも共通していることで、必然的にここになる、という感じです」
入りやすさが、初めてのお客さんを連れてくる
主催者にとって見逃せない話がもうひとつありました。ライブハウスに慣れていないお客さんをどう迎えるか、という点です。
「トイレも、入口の外観もそうですけど、アンダーグラウンドの世界に飛び込むという体験自体が苦手な人もいると思うんです。そういう人を全く選ばない作りになっているのが、最大の長所な気がします」

「ここを経験して入門したからこそ、次に別の箱に行ったときにも『ここはこういう特色があるんだな』と楽しんでもらえる。順番としてはその方がいいんじゃないかと」
自主企画の集客は、もともとライブに来ている人だけでは頭打ちになります。友人や同僚、SNS経由で初めて来る人をどれだけ呼べるかが動員を左右するので、会場のハードルが低いかどうかは無視できない条件です。
見え方についても話がありました。
「ステージが少し高いので、お客さんがいっぱい入っても後ろの方まで顔が見える。そこもやってる側としてはテンションが上がりますね」
ステージ高は460mmです。フロアの奥行きが短いことと合わせて、満員に近い状態でも後ろのお客さんの表情が見えます。

これから初めて自主企画を組む方へ
最後に、初めて自主企画をやろうとしているバンドへのアドバイスを聞きました。返ってきたのは「他も見た方がいい」という言葉でした。
「僕たちがここを好きだと言っているポイントは、演者としてのストレスがどれだけ減らされているかというところから来ていると思うんです。だから、何個か他のところにも出てみる。2つ3つ出てみて体感して、ようやく『言ってたのはこういう意味やったんや』と分かると思うので」
会場は数字と写真だけでは決められない、というのが、取材を通して繰り返し出てきた話でした。
取材協力:フリージアン 取材・文:TOKIO TOKYO
フリージアン
2021年結成、神戸を拠点に活動する4人組ロックバンド。
Vo.マエダカズシ/Gt.MASASHI/Ba.隆之介/Dr.たなりょー
公式サイト:https://freesian.jimdosite.com/
YouTube:https://www.youtube.com/@FREESIAN_OFFICIAL
会場の検討をはじめる方へ
TOKIO TOKYO は渋谷・宇田川町、キャパ180(スタンディング)のライブハウスです。定期利用の条件、会場費に含まれる機材、当日の進行までを公開しています。
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