自主企画をやってみたい。でも、いくらかかって、何人呼べれば黒字なのかが分からない——会場側で日々お問い合わせを受けていて、一番多い不安がこれです。

結論から言うと、自主企画の収支は3つの数字だけで決まります。この記事では、その3つの数字の考え方と、私たちが実際の見積もりに使っている計算をそのまま入れた**収支シミュレーション表(無料・Googleスプレッドシート対応)**を配布します。

📥 収支シミュレーション表をダウンロードするファイル→コピーを作成で使ってください

数字は当会場(渋谷・キャパ180)の実額で例示しますが、テンプレは会場費を書き換えればどの会場の検討にも使えます。

自主企画の収支は、3つの数字で決まる

イベントの収支は、突き詰めるとこれだけです。

利益 = チケット価格 × 動員数 − 会場費用の総額

つまり決めるべき数字は3つ。

  1. 会場費用の総額(税込・付帯費用込みで、いくら払うのか)
  2. チケット価格(いくらで売るのか)
  3. 現実的な動員数(何人呼べるのか)

シンプルすぎると思うかもしれませんが、赤字になる企画は、ほぼ例外なくこの3つのどれかの見積もりを間違えています。順番に、間違えやすいポイントを見ていきます。

数字①会場費用:「総額」で把握する

会場費用でつまずくパターンは、表示価格と支払総額のズレです。基本料金は把握していたが、オペレーター費・電源使用料・消費税を足したら数万円上振れした、というケースは本当に多い。

当会場の実額で示します。平日に10時間(12:00〜22:00、搬入から撤収まで)借りた場合:

項目金額
会場費(平日)190,000円
付帯料金(音響・照明・電源)27,000円
消費税21,700円
総額238,700円

会場を比較するときは、必ず**「付帯費用と税を込みで、総額いくらですか」**と聞いてください。この質問に即答できない会場は、後から追加費用が出てくる可能性があると考えたほうが安全です。(当会場の曜日別・定期利用の全料金は料金記事で公開しています)

数字②チケット価格:安くしすぎない

初めての企画で一番やりがちなのが、「安くすれば来てくれるはず」という値付けです。これはほぼ確実に収支を悪化させます。

算数で確認します。チケットを3,500円から3,000円に下げたとします。動員70人なら35,000円の減収です。この減収を値下げ効果で埋めるには、3,000円で12人多く呼ぶ必要があります。500円の値下げで12人増える保証は、どこにもありません。一方で、値下げしなくても来てくれる人は、あなたのライブに交通費とドリンク代を払ってでも来る人たちです。

私たちは、この規模の自主企画なら3,500円前後を推奨しています。価格で迷ったら、下げる前に「その500円は動員何人分か」をシミュレーション表で確認してください。

数字③動員数:希望ではなく実績から積む

動員の見積もりは、「来てくれたら嬉しい人数」ではなく「直近のライブに実際に来た人数」から積み上げます。

  • 基準になるのは、直近3本のライブの平均動員(フォロワー数ではありません)
  • 対バン形式なら、各出演者の「実際に呼べる数」の合計。主催のあなたが把握できていない数字は、0.7掛けくらいで見るのが安全です
  • 招待(ゲスト)は収入ゼロとして数えること。ここを混ぜると計算が全部崩れます

なお当会場では、招待のお客様からもドリンク代(600円)を頂戴する運用で、主催者様がドリンク代を受け取らない場合はその分が主催者様への請求になります。招待を多く出す企画は、この「見えない費用」も忘れずに。シミュレーション表には織り込めるようにしてあります。

損益分岐は「曜日」でここまで変わる

3つの数字が揃ったら、損益分岐(何人で黒字になるか)が出ます。チケット3,500円・当会場の実額で、曜日別に並べるとこうなります。

利用日会場費用総額(税込)損益分岐の動員数
平日・定期利用194,700円56人
平日238,700円69人
金曜・祝前日271,700円78人
土日祝359,700円103人

見てのとおり、同じ企画でも土日祝と平日では、必要動員が34人違います。

初めての自主企画を土日で組みたくなる気持ちは分かります。ただ、土日はお客さんの側も選択肢が多い日です。動員がまだ読み切れない最初の企画こそ、分岐点の低い平日で確実に黒字を出し、その実績を次につなげるほうが、戦略として堅い——会場側として多くの企画を見てきた実感です。

(平日は18時までメインスピーカーの音量制限があるため、18時以降の開演でタイムテーブルを組む形になります。詳細は料金記事を参照してください)

赤字になる企画の5つの共通パターン

会場側から見ていて、赤字になる企画には型があります。逆に言えば、これを避けるだけで大半の失敗は防げます。

1. 最初の企画を土日祝で組む。 分岐103人は、初回にはかなり高いハードルです。

2. チケットを相場より安くする。 前述のとおり。値下げは「効果が保証されない値引き」を全員に配る行為です。

3. 招待を配りすぎる。 招待20人は、収入ゼロ+ドリンク請求のリスクで、実質マイナスです。呼ぶべき人を絞る。

4. 会場費以外の費用を忘れる。 フライヤー印刷、デザイン、出演者への謝礼・交通費、機材レンタル。シミュレーション表には「その他費用」欄を設けてあります。

5. 動員をフォロワー数から見積もる。 SNSのフォロワーと実動員は、まったく別の数字です。実績から積んでください。

シミュレーション表の使い方

配布する表は3シート構成です。

①シミュレーター:黄色のセルに「曜日・チケット価格・想定動員・オプション」を入れるだけで、総額・損益分岐・想定利益が自動計算されます。チケットを自社販売にするか、会場やプレイガイドに委託するかで手数料も変わるので、そこも選択式にしてあります。

②マスタ:会場費・付帯費・税率のデータが入っています。別の会場を検討するときは、このシートの会場費を書き換えれば同じ計算がそのまま使えます。

③損益分岐早見表:チケット価格(2,500〜4,000円)× 曜日の全組み合わせで、必要動員数を一覧化したものです。企画の初期段階で「どの曜日×どの価格なら現実的か」の当たりをつけるのに使ってください。

📥 収支シミュレーション表をダウンロードする ※Googleスプレッドシートで使う場合は、ドライブにアップロード後「ファイル → コピーを作成」でご利用ください。

計算して、黒字が見えたら

損益分岐が「今の自分の動員で届く数字」になっていたら、企画は成立します。あとは日程です。

まだノルマ制のイベントに出ている段階で、「自主企画とどちらが得か」を迷っている方は、ノルマとギャラ制の仕組みを解説した記事も参考にしてください。1組あたり20枚売れる動員があれば、主催側に回るほうが手残りは大きくなります。

よくある質問

Q. 対バン企画の場合、会場費はどう分担するのが普通ですか 主催者が全額負担して出演者は無料(ギャラなし)、出演者間で頭割り、主催者負担+出演者にチケットバック、など形式は自由です。レンタルでは出演条件を主催者が設計できるので、シミュレーション表の「その他費用」欄で謝礼やバック分を織り込んで計算してください。

Q. 損益分岐ギリギリの動員見込みしかありません。やめるべきですか 初回を「利益ゼロでも実績と経験に投資する回」と位置づけるのは、十分合理的な判断です。ただしその場合も、上限リスク(最悪いくらの赤字までなら許容するか)を先に決めてください。

Q. 平日と土日、動員のしやすさは実際どれくらい違いますか 客層によります。社会人中心なら平日夜(19時以降開演)でも動員は大きくは落ちません。学生中心なら土日が有利です。「34人の分岐差を埋めるほど土日の動員効果があるか」で判断してください。