2024年5月15日(水)、東京・渋谷TOKIO TOKYOにて『LOOSE PLAY』が開催された。『LOOSE PLAY』は、同ライブハウスが主催する対バンイベントとして2022年7月にスタート。今後はLET ME KNOWや藤本夏樹、Empty old Cityらが出演することが決定しており、お酒を片手にラフに楽しむことができるような1日を生み出し続けている。企画担当・ニイムラ氏が「色々な人に見て欲しいスリーマン」と称した今回は、紫 今とレトロリロン、CLAN QUEENの3組が出演。三者三様の手腕でオーディエンスを踊らせたステージの様子をお届けする。

紫 今 フィジカル的なライブへの進化

颯爽とステージに姿を現した紫 今のアカペラが、フロアの静寂を切り裂いた。伸びやかな高音に思わず鳥肌が立ち、オーディエンスからの視線が一瞬にして熱を帯びたのが分かる。「行くぜ、渋谷」の開幕宣言とともにミラーボールが回り始めると、「エーミール」でライブがスタートした。

「今日は沢山集まっているね!」とパンパンの会場を見渡すと「新曲をやります」と宣言。ファンからの喜びの声を全身に浴びて披露された新曲は、独特なリズムのクラップが印象的なナンバーだった。オープナーの「エーミール」でも観客から噴出したクラップが客席のボルテージを上げていたが、初めて体験するリズムに呼応して懸命に体を動かすリスナーの姿を見て、同曲もライブの一体感を生み出すアンセムへと進化していくことを確信する。

消えてしまうような儚い紫 今の声色とピアノやストリングス、ドラムの壮大なサウンドに息を呑んだ「酔い夏」でメロウな空気を完成させると、リリース前から代表曲へと躍り出た最新曲「魔性の女A」を連ねる。世界各国の音楽要素がリレーを繰り広げながら“美”への価値観を紡いでいく同作を、折にキュートに折にクールに歌唱のトーンを変化させながら歌い上げる紫 今の風姿は「役に入る」という形容がドンピシャ。一節ごとに表情が変わる紫 今には、元来のミステリアスな雰囲気と相まって「彼女こそが“魔性の女”なのでは?」と思ってしまう引力があった。

「ラスト2曲まだまだいけますか?」と煽ると、フィナーレに向けて猛攻を開始。マッシブな2ビートが爆発した「フラットライン」に続けて、<天才>のコールが発生した「凡人様」でゴールテープを切った。

筆者が紫 今のライブを見るのはおよそ2カ月ぶりだったのだが、短い期間でここまで進化するのかと驚かされた。表現力はさることながら、より肉体的な表情の見える一幕が増え、ライブならではのコミュニケーションを重視していることを感じ取ることができた30分であったためである。8月22日(木)にTOKIO TOKYOで開催される初ワンマンライブ『Episode 0』では、どのような世界が展開されるのか楽しみで仕方ない。

レトロリロン 音楽を通じて友達になること

水が滴るようなSEが鳴り、会場は薄暗い洞窟を彷彿とさせる幻想的なムードへと包まれた。段々とトーンを上げた登場曲に導かれ姿を表した飯沼一暁(Ba)と永山タイキ(Dr)がおもむろにセッションを開始。「レトロリロンです。どうぞよろしく! 久々の渋谷楽しんでいきましょう」と涼音(Vo&A.Gt)が開幕を宣言すると「ヘッドライナー」でショータイムが始まった。飯沼のスラップから放たれるアグレッシブな音色とmiri(Key)が奏でる華やかな調べが混ざり合い、オーディエンスからもがっちりと手が掲げられる。

続けて演奏された「DND」では、涼音がトランペットを吹く仕草を見せるお茶目なワンシーンも。「自由に体を動かして楽しんでください」という彼自身の言葉を体現するライブにつられて、ラフにこの瞬間を楽しもうとする雰囲気が流れていた。

観客から<Oh oh oh oh oh>のシンガロングが湧き起こった「Document」を終え、『休みとか仕事とかにかかわらず、皆で集まって「今日から頑張ろう」と思える。そんなライブハウスが好き』とライブハウスへの愛情を語ると、「俺らの音楽が必要になる時があると思っていて。その時にまた会いましょう」と再会の約束を結ぶ。そっと必要な言葉を差し出してくれる涼音のMCから代表曲の一つ「深夜6時」がプレイされた。オレンジと青色の照明が、ジャケット写真を想起させる明け方のような光景を描き出す。満面の笑みでソロを弾き上げるmiriの姿も印象的だった。

「ここにいる人を友達にして帰ることができたら」と話してラストに据えられたのは「TOMODACHI」。会場から送られたクラップに対して目を見て頷く涼音と飯沼の様子は、ライブを通じてオーディエンスとレトロリロンが“友達”になった証にほかならない。

CLAN QUEEN 歌劇のような物語性

SFチックなSEが鳴り響き、ステージに登場したCLAN QUEEN。yowa(Vo)の「CLAN QUEEN始めます」の声を号砲に「プルートー」で幕が切って落とされた。のっけからAOi(Vo,Gt)とマイ(Ba,cho)、多部いなば(Sup Dr)が阿吽の呼吸を見せつけ、会場を跳ねさせていく一方で、客席に背を向けたままのyowaに視線が奪われる。3人がボルテージを高めれば高めるほど、ひりついたオーラを放つyowaとの対比が際立つ。

畳みかけた「サーチライト」では、AOiの色気漂うラップがピンク色の電飾と相まってアダルトな世界観を見せつけた。AOiとyowaのハーモニーが炸裂するサビのパートでは、2人は同じバンドでありながら、ライバルのように見える。どちらかがどちらかを引き立てようとするのではなく、主役を奪い合うがごとく互いに負けじと歌唱することで相乗効果が生まれ、攻撃力を保ったままのハーモニーが生まれるのだろう。

雪崩れ込んだ「天使と悪魔」でもツインボーカルの特徴を最大限に発揮。<今でも 天使と呼んでくれる?>と問いかけるyowaと<だから私嘘つき ベットに忘れた 羽も今じゃ真っ黒に染まり>と吐露するAOiは、天使と悪魔の姿にそのままオーバーラップする。声色の違う2人のボーカリストを有することに起因する歌割りが、歌劇ともリンクする物語性を生み出していた。

前半戦を終えても4人の勢いは留まることを知らない。マイと多部が形成した強固なビート上で、yowaが放った<Stop!>の一声が会場の時を止めた「ヘルファイアクラブ」、車のエンジン音のインタールードが渋谷の空気を喚起させた「Tokyo Mood」を連投。MCもなく次々にドロップされる楽曲たちにファンは大歓声で応える。

ラストに鳴らされたのは「踊楽園」。<One,two,three,four,five>のフレーズとシンクロして1から2、3の順でハンドサインが掲げられ、ライブならではの遊び方が生まれていることを実感した。

この日の開演前にはTOKIO TOKYOが展開する夏のイベント『BONE WEEK WONDER’24』への出演がアナウンスされたCLAN QUEEN。小林私とのツーマンライブでは、どのような化学反応が生まれるのだろうか。

文:横堀つばさ

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