
失恋した時やはしゃいでいる時、自分の感情を言語化すると「悲しい」や「楽しい」に還元されてしまうことをもどかしく思う。自身の感情はもっと複雑でグラデーションになっているにも関わらず、一つの言葉に落とし込まれてしまうためだ。the quiet roomはそんな得も言われぬ感情の機微をバンドサウンドで表現し、テーマである“表情豊かに生きる”を体現してきた。
今年の1月に目標であったZeep Shinjuku (TOKYO)でのワンマンライブを成功させ、秋には3年ぶりとなるフルアルバムをリリースする彼ら。7月30日(火)に渋谷・TOKIO TOKYOにてFINLANDS、Hwylと繰り広げる『BONE WEEK WONDER’24』の開催に先立ち、今回TOKIO TOKYO Knowledge Shareでは菊池遼(Vo,Gt)にたっぷりと話を訊いた。インタビューを通じて見えてきたのは、走り続けるthe quiet roomの現在地だった。
「ライブハウスのステージに立つ意義を再確認できた」 夢のZeepワンマンを終えたバンドの現在地
――4月から6月にかけ、全国9都市でのツーマンツアー『the quiet room Tour 2024 “ひと粒のうたを分け合って”』を開催されていましたが、どのようなツアーになったと感じていますか?
その土地に合いそうなバンドやその場所に思い入れのあるバンドを呼ぶことができたので、このタイミングでthe quiet roomとして対バンしたいバンドと共演できたツアーになりましたし、お客さんにも楽しんでいただける有意義な9公演でしたね。

――1月に開催された東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でのワンマンライブ『不時着する運命たち』を経てからの対バンツアーということで、これまでとはまた違った感覚があったと思うのですが?
率直に言ってしまうと、大きな目標だったZeepでのワンマンライブを成功させられたことで、ある種目標を達成してしまった感覚もあって。ワンマンを終えてどのようなモチベーションでライブに臨むのか悩んでいたんです。でも、ツアーを通して改めて大切なものに気づけたというか。これまでは「観てくれているお客さんのために良いライブをしたい」という感覚が強かったんですが、今回はお客さんや対バン相手からもらった刺激が本当に自分のためになって。歌うことやライブハウスのステージに立つ意義を再確認できたなと。
――2024年秋に『花束のかわりに』以来3年ぶりとなるフルアルバムがリリースされます。同作には2023年9月より3作連続でリリースされた「Tsubomi」、「悪い癖」、「Nowplaying」も収録されますが、ライブやツアーを経てそれぞれどのような楽曲だと感じていらっしゃいますか?
もともと意図的に3作連続でリリースしたわけではなかったので、曲同士が繋がるような意識はなくて。でもライブで披露している内に、それぞれ違ったアクセントとしてお客さんに楽しんでもらえる3曲になったと思います。
――「悪い癖」は失恋を歌う<別れ際 そっと笑いかける あなたの悪い癖>のラインと柔らかなバンドサウンドのギャップが印象的な1曲です。the quiet roomの音楽を通じて、悲しい楽曲を悲しくしすぎないようにしている側面を感じているのですが、いかがでしょう。
おっしゃっていただいた通りで、重たい内容を歌う楽曲の時はリズムやメロディーで軽やかにしていくことを強く意識していますね。
**――**楽曲で歌われている内容に合わせてしっとりと仕上げることも可能だと思うのですが、なぜ軽快な雰囲気にしているのですか?
バンドの大きなテーマとして“表情豊かに生きる”を掲げる中で、曲を聴いた後に悲しいだけで終わってほしくないんです。悲しいだけでもポップなだけでもなく、1曲の中に色々な感情が入っていた方が聴き応えもあると思いますし、曲を聴き終えて明るい気持ちで生きていけるかなって。
――「Nowplaying」は“自分の人生が1枚のアルバムだったとして、今はいったい何曲目なのか?”をテーマにした(※1)とのことですが、菊池さんはご自身の人生を振り返って今何曲目だと思いますか?
何曲目か分からないからこそ「Nowplaying」を作った部分がありますし、これが最後でも良いというか。「この瞬間が最後でも良い」と思えるようにライブや作品作りに臨まなければならないですし、やりたいことを全部出しきれなければ意味もなくなってしまうと思うんです。なので、1本1本力を使い果たしながら生きていかなきゃだと感じています。
――時々でベストを尽くしていくのが大切だということですよね。そもそも、人生を例えるものとしてアルバムを選んだ理由は何だったのでしょう。
アルバムという単位で音楽を聴くことも少なくなってきた中で、僕は1枚を通して音楽を聴くことが好きで。改めてアルバム単位で音楽を聴くキッカケになってほしいという思いもありますし、実際に「Nowplaying」がアルバムの何曲目に入るのかも含めて楽しんでもらえるかなと。
――ここまでお話いただいた3曲を収録したフルアルバムが今秋にリリースされます。「Nowplaying」がどこに入るのかも含め気になる所ですが、どのようなアルバムを目指していますか?
バンドのテーマである“表情豊かに生きる”を体現するアルバムにしたいと思っていますし、喜怒哀楽の感情を網羅した1枚にできればなと。あとは、ライブを積み重ねて身に着けた技術的な部分やアレンジャーの方を加えたことで生まれた進化を聴いてもらいたいです。
「チケットを見返して頑張る勇気をもらう」 ライブハウスとの偶然の出会いが大きなキッカケに
――作品を通じて様々な感情を表現する中で、切っても切り離せないのがライブだと思います。まずは菊池さんのライブの原体験を教えてください。
地元である水戸のライブハウスに行ったのが初めてのライブ体験でした。後日その会場に出演することが決まっていたので、フラっと足を運んで。その時出会ったFoZZtoneの楽曲をバンドのSEに使わせてもらったりと自分の中で大きなキッカケだったと思います。未だにその日のことを思い出しますし、残してあるチケットやフライヤーを見返して頑張る勇気をもらっていますね。
――the quiet roomはコンスタントにツアーを開催されたり、精力的にライブ活動に取り組んでいらっしゃいますが、意識的にライブ活動を重要視しているのでしょうか。
もちろんライブは大切にしていますが、気がついたら多くなっている部分もあって。やっぱりライブは楽しいですし、やりがいを感じるからこそ自然とライブバンドになっているのだと思います。最近気づいたんですが、疲労が溜まる原因も元気をもらえるキッカケも音楽なんですよ。ライブや制作を続けているからこそ、気づける大切さがあるんだなと。
――『ひと粒のうたを分け合って』や『いま、偶然を抱き寄せて』など毎回のツアータイトルにもthe quiet roomの思いが表れていると感じていますが、菊池さんが目指す理想のライブ像を教えてください。
ツアータイトルは公演を通じて伝えたいことを掲げているんですが、最近はそのタイトルから発想を得て作品を生み出すこともあって。作品と連動したツアータイトルにすることで、1つの仕掛けとしてお客さんに楽しんでもらいたいです。ライブに関しては、色々な感情を1本のライブで感じてほしいと強く思っているので、その気持ちがサウンド面やパフォーマンスに表れているかな。それとは別に、老若男女を問わず楽しんでもらえるライブにすることを意識していますね。
――全世代が楽しんでもらえるライブにしたいと思ったキッカケは何だったのでしょう。
昔はバンドの音楽性に伴って女性のお客さんが多かったんですが、最近は男性の方も増えましたし年齢層も広がっている感覚があるんです。性別や年齢に関わらず、友達とでも1人でも気楽に来てもらえるライブにしたい。来てもらった人を一人きりにさせたくないですし、色々な人が入り混じりながら平等に楽しめるバンドでありたいと考えています。
――「一人きりにさせたくない」という思いは楽曲の中にも表れていると思います。
仕事の休憩中や学校の帰り道など、何気ない瞬間に再生してもらえる音楽でありたいんです。気づいたら傍にあって生活の隙間を埋めることができる音楽を目指していますし、一色ではない複雑でリアルな感情を曲の中できちんと拾っていけたらなって。
FINLANDS&Hwylと生み出す『BONE WEEK WONDER’24』
――7月30日(火)には渋谷・TOKIO TOKYOにて『BONE WEEK WONDER’24』が開催されます。対バン相手のFINLANDSとHwylにはどのようなイメージをお持ちですか?
FINLANDSはこの前イベントでご一緒した時にライブを拝見させていただいて。札幌でのイベントだったので涼しいと思っていたんですが、その日はかなり暑かったんですよ。FINLANDSの皆さんはマフラーを身に着けてステージに立たれていたんですが、MCで「暑い!」と話されていたんですね。観ていて「暑いって言っちゃうんだ!?」と思いましたし、当日も熱いライブを期待しています(笑)。Hwylは初めての対バンということで、純粋にライブを観れるのが楽しみで。ライブハウスに行き始めた頃から変わらずフロアでライブを観ることが好きなので、ワクワクしています。

――改めて、7月30日(火)『BONE WEEK WONDER’24』に向けた意気込みをお願いします。
ライブバンドだと思っていただいていることが分かったので、the quiet roomらしい良いライブにします!
――10月12日(土)東京・Shibuya eggmanより、ツアー『the quiet room Tour 2024-2025「いま、偶然を抱き寄せて」 関東近郊編』がスタートします。どういったツアーにしたいですか?
アルバムを引っ提げたツアーが久しぶりになるので、セットリストを組むのが楽しみですね。アルバムの曲が中心になることで、最近のツアーとは曲順や見せ方、パフォーマンス
が全く違うものになると思っています。
――それこそ「Nowplaying」がどこに入ってくるのかも気になります。
悩みますよね(笑)。何カ所も来てくださる方もいらっしゃるので、皆が飽きずに楽しんでもらえるツアーにしていきたいです。

取材・文=横堀つばさ
(※1)https://skream.jp/interview/2023/12/thequietroom.php
7月30日(火)開催『BONE WEEK WONDER’24』

出演:FINLANDS / Hwyl / the quiet room
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV / DOOR ¥3,000 / ¥3,500 + 1D
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