2024年5月16日(水)、東京・渋谷TOKIO TOKYOにて『FREE!!! vol,22』が開催された。

『FREE!!!』は、同ライブハウスが主催する新人発掘チケットフリーイベントとして2022年4月にローンチ。これまでに浦小雪や東京少年俱楽部、CheCheら注目のニューカマーを招き続け、新たなアーティストとの出会いの場となってきた。今回は、308pondとbutohes、doggie、Fallsheepsの4組が出演したステージの模様を紹介する。

**Fallsheeps この30分が何かの始まり **

この日のトップバッターを務めたのはFallsheeps。1月にリリースした3rd E.P『Dunk』のオープニングナンバーでもある「Limelight」でキックオフすると、川口淳太(Gt,Vo)が叫んだ「ギターソロ!レイヤ!」の紹介をトリガーに、コーグチレイヤ(Gt,Cho)がひりつくようなソロを挨拶代わりとばかりにかましていく。

「新人の荒々しさを爆発させようと思います」と意気込みを告げて投下されたのは「Butt Out!」。川口が刻む軽やかなカッティングと重たく歪むパートが点滅するかのように移り変わり、フロアを時に跳ねさせ時にずっしりと揺らす緩急を見せつける。

チケットフリーイベントである『FREE!!!』がチャレンジ精神に満ちたイベントであるのと同様に、Fallsheeps自身も“研修生ベーシスト”としてosamを迎え挑戦している最中だと語ると「(Deadend) Offspring」へ。

〈誰も助けてはくれないから 君は全く別人になるんだよ>のラインでボリュームを上げた後、ぴたりと音を止めると静寂が広がる。その無音を裂くように川口が弾き語っていく光景は、幻想的でありながらもどこか憂いを帯びていた。

最後を飾ったのは、7分超のロングナンバー「こころをだいじに」。ハードコア直系のざらつくリフが空間を切り裂くと、客席からは声が上がる。osamのフレーズに川口とコーグチが加わり紡いだ轟音の中で叫び続けるItsuki Kun(Dr,Cho)の姿は、<こころをだいじにしていて>という切なる願いとシンクロしていた。

川口は「新しいアイデア、新しいアプローチというものは2000人の前では起こらない。そういうのは20人~25人が目撃するものなんだ」とイアン・マッケイの名言を引用し、今宵が何かの始まりになっていくと話していた。あの数分のMCは、まさしく『FREE!!!』の本質であったように思う。街頭の光も当たらない地下のライブハウスで事件のような夜が起き、忘れられない出会いを生む。今夜がそんな1日になることを確信させるような、30分だった。

Butohes 息を呑むような幻想的な世界へ

2番手はButhes。1曲目にセレクトされたのは、メタリックな音色のドラムと低体温のメロディが耳に飛び込んでくる「Aquarium」。天使の梯子を思わせる青白い光が天井からフロアへと注がれ、円柱状の水槽の中を海月が揺蕩う情景のような幻想的な雰囲気に包まれる。

畳みかけた「breathes」では、たっぷりとリバーブのかかったKanju Inatsug(Gt,Cho)のギターとNaoto Fg(Ba)が鳴らすロングトーンのベースが、まるでどこか遠くの宇宙と交信しているようだった。Kate Yonnesz(Dr)のプレイに合わせて段々と大きくなる音量と加速するビートは、ステージを照らした黄緑のライトと相まって何かが芽吹いていくことを予感させる。冒頭で提示されたフレーズが終盤で再度登場する同曲は、生命の終わりが次の命を育む、そんな円環を象徴しているのかもしれない。

うねるようなベースフレーズが印象的な「Alba」ではKanju InatsugとMichiro Inatsug(Gt,Vo)のユニゾンが会場を踊らせる中、Kanju Inatsugが音像を次々に変化させていく。約8分とボリューミーな楽曲でありながらも、まだ聴きたいと思わせる4人の説得力に圧倒された人も多かったのか会場からは感嘆の声が聞こえてきた。

「ありがとうございました。横浜の先輩・Fallsheepsと共演できて嬉しかったです」と先輩からのバトンをしっかりと次へと繋ぎつつ、「沢山酔っぱらっていきましょう」と述べると、フィンガーピッキングの柔らかいサウンドに浄化される「Pluto」「Hyperblue」を続けて披露しフィニッシュ。息を呑むステージングで、観客を夢のような世界へと誘った。

308pond 物語に裏付けられたパンクサウンドを鳴らす

3番手を務めた308pondは、4月にリリースされたシングル曲「Fish Story」で幕を上げると、富永(Gt)がかき鳴らす8ビートから重政(Ba)が加わる疾走感溢れるイントロが特徴的な「世界の終わり」へと接続し、2バンドが作りあげた浮遊感漂う客席を初っ端から一気に自分たちの世界へと染め上げた。

息つく間もなく、梶井基次郎の『檸檬』からインスパイアを得たであろう「檸檬爆弾」、<BOYZ on the GUN>にも聴こえてくる<懲りずオンザバン>の空耳英語的なリリックが面白い「BOYZ on the GUN」と1stアルバム『void7』でもお馴染みの流れでショートチューンを連投し、加速していく。

伊坂幸太郎の短編小説『フィッシュストーリー』から着想を得たと思われるオープニングナンバー「Fish Story」でも感じたことであるが、パンキッシュなサウンドを物語によって補強することで彼らの楽曲には奥行きがもたらされているのだろう。

井上(Dr)のカウントを合図に演奏された「東京西新宿物語」と村越(Vo)が「ラブソングです」と語り鳴らされた「ラブソング」の接続は圧巻だった。アイロニカルで痛快な歌詞が綴られた前者と<誕生日も記念日も、出会った時の頬の赤さも、忘れたくないのは、君だけだから。>と一点の曇りのない愛を注ぐ後者が連続することで、世間へのフラストレーションを爆発させるカウンター的側面だけでなく、恋焦がれる人への思いを吐露する純真な一面が垣間見える。この両サイドこそが、彼らの“青春パンク”を築く原動力になっているのだと思わされる数分間だった。

「パンクバンドなので、パンクやって帰ります」と宣誓すると「涙がこぼれそう」をフィナーレに沿える。彼らの“パンク”にオーディエンスが共鳴していたことを証明するように、フロアからはいくつもの拳が掲げられていた。

doggie DJスタイルで見せつけた「doggieとは何か」

『FREE!!! vol,22』のアンカーを担ったのはdoggie。この日はhaz.amaをDJに迎えた編成での出演となった。何かに追われるような焦燥感と決意を改めた先に見える希望を歌った「images*」を1曲目にチョイスし、ステージから落ちそうなほど前のめりで歌唱すると、開始早々ファンとの一体感を生み出していく。

「大好きなライブハウス・TOKIO TOKYOで、大好きなバンドと一緒にライブができることを嬉しく思います。俺らしいスタイルで、ハイパーポップやります」と高らかに宣言して雪崩込んだのは「FallingDown*」。同曲の中盤、<幼い頃に描いた ステージが “TOKIO TOKYO ここのことだよ!”>とアレンジを加えてシャウトするdoggieの姿は、演奏形態やジャンルは関係ないと告げているようであった。

次に補填された「Healing」では、曲が進むにつれ1人また1人と踊りの輪に加わっていく美しい光景が湧出する。<眠れない君のことばかり書いてる><君だけを信じてる one way>のラインを体現するように、オーディエンスと目を合わせるdoggieの様子も脳裏に焼き付いている。

クライマックスでは、5月29日にリリースされるアルバム『"ex.UNDERDOGS*"』から「Neekite」と「Letters feat. Spendmylifeup(from ANORAK!)」、「Not UNDERDOGS*」を連投。じっくりと聴かせるバラードからブーストされた低音で会場を揺らす楽曲、クリーントーンのギターがインパクトを残すナンバーまで、アルバムの幅広さを見せつけた。

「俺の季節がやってくる」と呟くと爽快感溢れるギターロックチューン「ソレイユ」で、エンドマークを打つ。宣言通りdoggieらしいスタイルで駆け抜けたステージに、惜しみない拍手が注がれていた。

文:横堀つばさ

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