

3月10日(月)に渋谷・TOKIO TOKYOにて小林私とMassclubのツーマンライブ『ONE WEEK WONDER'25』が開催される。両者の希望を端に発した本企画の開催を目前に、TOKIO TOKYO Knowledge Shareでは2組による対談を実施。両者の出会いはもちろんのこと、バンドとシンガーソングライターそれぞれの表現形態に対するリスペクトや楽曲に対するイメージを語り合ってもらった。形は違えど通底していた、歌を通じて表現せんとする将来への希望。光り方は違っても、輝こうとする思いを彼らは確かに分かち合っている。
バンドのことを相談するのであれば小林さんしかいない
――3月10日(月)にTOKIO TOKYOにて小林さんとMassclubのツーマンライブが開催されます。今回のイベントはもともと交流があったお2組の希望を発端に実現したとのことですが、小林さんとMassclubの皆さんが出会ったキッカケは何だったんですか。
**小林私:**Massclubの皆さんとは、ニキさんを通じて知り合いました。というのも、ニキさんがもともとやっていたバンドと親交があったんですよ。そんな中でニキさんがMassclubで活動することを知って、バンドの存在を知ったっていう。
**ニキ(Sup Dr):**なぜかサポートメンバーから本メンバーに繋がった特殊な感じですね。
――ニキさん経由でMassclubを知ったのち、メンバーの皆さんと関わりができたのはいつ頃だったのでしょう。
**小林:**実はまだ直接お会いはできていないんですが、今回の企画の話が進む前にニキさんから「Massclubについて相談できないかな」とご提案いただいて、Ashu*さんとお話したんです。「僕らどうしたら良いですかね」と質問してもらったので、「絶対に相談先を間違えてないか?」と思っていましたけど。
*Ashu(Gt):**小林さんのお話で自分たちの考え方も整理できましたし、音楽業界に対する解像度も高まったから凄く有意義な時間でしたよ!
――Massclubの皆さんが、相談相手として小林さんに白羽の矢を立てた理由は何だったんですか。
**ニキ:**小林さんとご飯に行かせてもらった際に、バンドの進め方や音楽に対する意識をお話させてもらったことがあったんですよ。そこで小林さんが戦略的にというか、音楽活動に対して深く考えていることは分かっていたので、バンドのことを相談するのであれば小林さんしかいないなと。
**小林:**正直何を言ったかも覚えていないですし、戦略的と言われると難しい部分もあるんですが。それでも活動を続けてくる中で、どんな人がバンドを続けているのか、逆にどんな人がバンドを辞めていったのかは空気感として知っているところがあって。それを伝えたような気がします。
――小林さんは2024年8月のインタビューにてバンドでの表現に関して、「一緒に作品を作れる仲間がいることが羨ましい」といった旨を語っていらっしゃいますけど、Massclubというバンドに対してはどのような見方をしているのでしょう。
**小林:**ニキさんの紹介でAshu*さんと喋る中で「ニキさんがドラムに入ってくれて嬉しいです!」みたいに話していて、羨ましいなぁと。やっぱり1人でやっていくのは寂しいんで。バンドをやっていく上でプレイヤーとしての能力だったり、生活能力だったり、重要な要素はあるにしても、仲良いバンドが絶対に良いことは間違いないじゃないですか。既にそこがクリアできているMassclubは、もう良いバンドなんだと思いますね。
**IN(Vo,Key):**そもそも僕らは音楽で繋がったわけではなく、友達からスタートしているので、そうやって言ってもらえるのは嬉しいです。
**小林:**友達で結成したにもかかわらず、こういう音楽形態になっているのも面白いですよね。音源からはストイックな奴らが集まった感じがあるのに、蓋を開けてみると、ニコニコした友達たちが出てくる。そこが良いギャップだなって。
――Massclubの皆さんは、お1人で活動されている小林さんに対してどのような感覚をお持ちですか。
*Ashu:**本当に格好良いよな。俺ら1人じゃ絶対無理じゃない?
**IN:**うん、絶対に無理だと思う。
**ニキ:**以前小林さんと別のバンドで対バンさせてもらった時は、正直なところ、バンドの方が迫力を出せると考えていたんですよ。やっぱり音数も少ないですし。でも、実際にライブを観てみたら、ギターがドラムであり、ベースなんですよね。リズムと低音がガーっと聴こえてくる上に、力強い歌声が乗っかってくる。小林さんが1人で成立するのは、1人でバンドだからなんだろうなと。
切り取る部分が違うだけで感覚的にはMassclubと近いんじゃないか(小林)
――先ほど、小林さんからはMassclubに対して「ストイックな感じがする」ともお話いただきましたが、小林さんはMassclubの楽曲に関してどのような印象を抱いていらっしゃいますか。
**小林:**きちんとしたテクニックを持った上で、ポップにできるバンドだと感じています。「BEAT」を筆頭に『Dance or Drive』の楽曲を聴いていても、平成っぽいというか、歌謡の要素を感じるメロディーセンスがあって。ビートやトラックアプローチがかっちりとしている分、そこに乗ってくるボーカルの歌詞や歌が軽やかに聞こえる。そのバランスが絶妙だからこそ、聴いていて気持ち良いんだと思いますね。
**IN:**僕らは楽曲の作り方がガッチリ決まっているわけじゃなくて。Ashu*は曲を作れるし、cocoもアレンジができたり、Lizが歌詞を乗せた状態のトラックを渡してくれることもある。そんな中で、Lizは僕よりもディープな感覚を持っているというか、HIP HOPの要素を取り入れてくれるんですよ。一方で、僕はポップスをずっと聴いてきたこともあり、ポップスの要素を織り交ぜながら、アンダーグラウンドっぽくなりすぎないようにしているんです。そうやってマイナーとメジャーの使い分けを意識しているから、小林さんに言ってもらったバランス感が調整されているのかなと。
――反対に、Massclubの皆さんは、小林さんの楽曲に対してどのようなイメージをお持ちなのでしょう。
**IN:**5年ほど前から僕は純粋に小林さんのファンだったんですけど、『健康を患う』の頃から印象はずっと変わっていなくて。とにかく声の粒が大きいというか、グッと入ってくる歌声だなと思っているんですよ。あとは、言葉選びが凄い。キタニさんとやっていた曲(『君はロックすら聴かない』)とかもそうですし。
**小林:**その曲、1個目に挙げるヤツじゃないですよ(笑)。
**IN:**検索しないと分からない言葉も沢山あって、文学的な歌詞を書かれている印象が本当に強いですね。
――おっしゃっていただいたように、小林さんの歌詞は文学的な側面を含んでいると思うんですけれど、そういった歌詞の質感は念頭に置かれている?
**小林:**いや、「調べないと意味が分からなくて……」「文学的で……」みたいに言われることが増えて、ようやく俺の歌って分かりづらいんやって思ったぐらい自分では分かりやすく書けているって思っていたんで。もともと自分の原体験として読書があったから、根本的な言語野が口語じゃなくて、文語的なんだろうなと。
――自らの語彙が文語的であることを自覚したキッカケは何だったんですか。
**小林:**もともと人の歌詞を読むことが好きだったのもありつつ、音楽が仕事になって一層注意深く見る場面が増えたり、歌詞について話すシーンが増えてきて。その時に自分の歌詞を振り返ったら、隙間がないというか、漢字が多いなと思ったんです。英語も全然ないですし、パッと見た時に真っ黒だなっていう。
――今のお話も踏まえつつ、お互いの歌詞は手触りとして全く異なると思うのですが、小林さんはMassclubの歌詞をどのように捉えていらっしゃるのでしょう。
**小林:**こんなに軽やかに書けたらなって思いますけどね。特に「jetcoaster」は<生かされたミュージックに侵されて><身体の内側から侵されても>と2回「侵されて」を使っているじゃないですか。僕は同じ言葉を避けてしまうタイプなので、自分だったら絶対に書き換えちゃうだろうなと思いつつ、「全然、言葉が被っちゃっても良いぜ」みたいな言葉選びをしているのが良いなと。歌詞を書き換えている状態って、ある種正解が見つかっていないわけじゃないですか。でも、Massclubの歌詞は「この一文がこの曲にピタッとハマっている」っていう肌感的な自信というか、言葉に対する自信が無意識のうちに出てきているんですよね。
**Liz(Vo):**書き換えた方が良いと思うこともあるんですけど、正直、それ以上に良い言葉が見つからないというか。下手に変えて自分の納得できないものを出すくらいやったら、同じ言葉があっても納得できるものを出したい。それが言ってもらった部分に繋がっているんだと思います。
――<人生は楽しむがテーマ>と歌われている「Flavor」を筆頭にMassclubの楽曲には、今をエンジョイするための方法が詰まっていると感じていて。一方、小林さんの楽曲は足元の暗さと視線の先にある明るさの対比が印象的というか、どこかで「いつか明るい未来が来るだろう」という信頼がある気がするんです。そして、それはMassclubが持っている楽観的な部分とシンクロするのではとも考えているのですが、小林さんはMassclubの楽曲のどのような部分にシンパシーを感じますか。
**小林:**確かに僕の歌詞は決して明るいわけではないんですが、ネガティブな感情があった時にマイナス一辺倒は良くないという感覚があって。というのも、歌詞に起こす時点で、ある程度その感情をプラスのものにしようとする冷静さがあると思うんですよ。だから、その冷静さを欠いてドラマチックに書くのは嘘になってしまう気がするし、怒りであれ、良いことであれ、歌詞に落とし込む客観性を含んだ上で、言葉を選んでいる。結果的にそれはポジティブな営みだと思いますし、切り取る部分が違うだけで感覚的にはMassclubと近いんじゃないかなと。
――歌詞の中に織り込む感情の幅が違うから、アウトプットとして違って見える。
**小林:**そうですね。僕は暗い内容であっても、結果的にポジティブなことを言っている意識が一貫してあるというか。Massclubはその上で嫌なことだけじゃなくて、プラスのこともあるよと伝えている。中心で扱っている感情の範囲が違うだけな気がします。
**Liz:**性格的には暗い歌詞が好きなんですけど、歌詞になると根っからのそういう部分が出ちゃうんですよね……。
**小林:**凄く遠回しに俺のことが根暗だと言っていませんか?
**Liz:**そんなことないです! どうしてもスッと出てきた言葉が明るくなっちゃうというか。
*Ashu:**彼(Liz)は器用なことができないんですよ。さっき話していた歌詞の繰り返しも含めて、自分の気持ちから出た言葉をドーンと置いている。その潔さが良いところなんじゃないかな。
**小林:**やっぱり普段使っている言葉の選択肢が違うんでしょうね。スマートフォンでも、よく使う言葉が候補に出てくるじゃないですか。それと同じで、人と喋ったり、頭の中で考える言葉の候補もあって。Massclubはその基本となる候補に明るい言葉があった上で、暗い歌詞を良いと思えるセンスもある。だから、楽曲全体が明るすぎないというか、太陽やライトの輝きじゃなくて、ミスト的なものに乱反射している光みたいな明るさになっているんだと思いました。
「縁が重なった1日」3月10日(月)開催『ONE WEEK WONDER'25』
――3月10日(月)に『ONE WEEK WONDER'25』が開催されます。小林さんは2021年の『ONE WEEK WONDER』や2024年3月の『ONE WEEK WONDER'24』、Massclubの皆さんは2024年9月の『【溶】-YOU-』や12月の『LOOSE PLAY』にもご出演いただいていますが、TOKIO TOKYOにはどのようなイメージをお持ちですか。
**小林:**TOKIO TOKYOはこけら落としイベントから出演させてもらっていますし、CRYAMYやjo0ji、CLAN QUEENをはじめ、思想を感じるブッキングの中に毎回巻き込んでもらえることが有難いなと。あとは、ニイムラさんが「小林さんとツーマンした若手の格好良いアーティストはどんどん忙しくなっていくから、小林さんは神的な存在なのかもしれない」みたいな嘘ジンクスを投稿してくれて。嘘でも良いからどんどんこのジンクスを広めていってほしいですし、それぞれのアーティストが大きくなったのちに「小林さんのおかげです」って言ってくれたら、僕もちょっとだけ天狗になれる。そうやって格好良いアーティストたちを送り出す場として、これからも幅を利かせていきたいですね(笑)。
*Ashu:**僕らは2024年の9月くらいに路上ライブの映像がバズって、そこから色んな方に声をかけていただく機会が増えたんですけど、ニイムラさんはそのバズの前からMassclubを見つけてくれていて。僕らが好きだったluvとかと対バンする機会を作ってくれたり、Cosmic Mauveをはじめ、新しいバンドとの出会いも作ってくれたし。小林さんも言っていたように、ブッキングに対して筋が通っていると思いますし、イベントに対する責任感が凄いなと。
**小林:**新しいハコっぽさがその点にはないというか、昔ながらのライブハウスの熱量を残しながらも、フレッシュなやり方を取り入れているというか。やっぱり僕はネット発でやってきた側面があるから、ホームの会場があるバンドマンに対して憧れを抱いてきた。でも、TOKIO TOKYOがそういう部分を担う何かになってくれてるのかな。


――改めて、3月10日(月)『ONE WEEK WONDER'25』はどのようなライブにしたいですか。
**ニキ:**ライブはもちろんなんですが、リハーサルやライブ前も楽しみですね。色々なことが話せたら良いなと思いますし、ライブ前から士気を高めて本番に臨めたらなと。
*Ashu:**ニキさんをキッカケに小林さんと繋がって今回のツーマンが実現したこともですし、トキトキの周年というのもですし、この日は沢山のご縁が重なった1日だと思うんですよ。いつものライブは勝負に挑むというか、がっついた気持ちもあるんですけど、この日は感謝を伝えたい。ニキさんが言ってたことも含め、楽しみながらもみんなで一緒に良い1日を作りたいですね。
**Liz:**2人が言ってくれたように、とにかく楽しみたいです。全力でやって、みんなで楽しく話ができたらオッケーなんで。
**IN:**まず、小林さんのライブを近くで観れることが嬉しくて。とはいえ、対バンとして全力で挑みにいく気持ちは忘れず、1日を通じて最高の日にできればな。
**Coco(Ba):**皆さんに対する感謝の思いも大きいんですけれど、僕の中では挑戦としての意味合いが強くて。というのも、僕らはこれまでツーマンの尺で演奏したことがなかったから。その分、自分たちの持ち曲をどうやって配置していくのかも考えなきゃいけないし、違う雰囲気を持った小林さんのお客さんに対してどのようなアプローチをしていくのかも模索しなければならない。全力で突っ込んでいって、その挑戦をクリアしたいですね。
――小林さんからも意気込みをお願いします。
**小林:**ライブ前後が楽しみなことは対バンとして良いなぁと思っていて。単にツーマンをやるだけだと寂しいし、このインタビューも含めてお互いの繋がりが見える1日にできたらと。音楽的なアプローチとして僕にやれることは多くないんで、終わった後のご飯代くらいは出しましょう!
取材・文=横堀つばさ
3月10日(月)開催『ONE WEEK WONDER'25』

出演:小林私 / Massclub
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV / DOOR ¥3,000 / ¥3,500 + 1D
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